昼下がりの、都内のビル。
その最上階にある古びた化粧室の個室に、nanaはひとり静かに入っていった。
外では仕事の喧騒が続いているのに、この場所だけは時間が止まっているかのようだった。
蛍光灯の白い光が、彼女の白いブラウスに反射して、ふわりと柔らかい陰を作る。
nanaは25歳。地方のアパレルメーカーでバイヤーとして働く彼女は、展示会のために東京へ出張に来ていた。
けれど今日この化粧室にいる彼女は、誰にも見せないもう一つの顔を持っていた。
ゆっくりとバッグを下ろし、呼吸を整える。
そして、ブラウスのボタンに指をかけて、ひとつ、またひとつと外していく。
白い布の下に隠れていた柔らかな胸が、空気に触れるたび、彼女の肌がわずかに震える。
「はぁ……」
吐息が、個室の壁に小さく反響する。
ブラジャーは最初からつけていなかった。出張の朝、自分で選んだ“秘密の服装”。
誰にも見せないけれど、誰かに見つかってしまいそうで——
その背徳のスリルが、彼女の心を少しずつ熱くしていく。
スカートのファスナーを下ろすと、デニムの布が音もなく足元へ滑り落ちる。
そして、パンティも履いていない下半身が、冷たい空気に晒された。
鏡に映るのは、普段は真面目で清楚なnanaとはまるで別人のような姿。
胸も脚も、何もかも解き放たれて、ただ静かに呼吸をしている。
「……だめだな、こんなことして」
小さく笑って、でもやめようとはしなかった。
それは“見られたい”のではなく、“自分の本当を知っていたい”という願いのようだった。
個室という小さな箱のなかで、彼女はただ静かに自分を見つめていた。
その姿は、誰にも見せない孤独と官能の狭間で、ただひとつの真実を宿していた。