彼女の名前はriko。
女子大学に通う4年生で、卒論を仕上げるために、東京のレンタルルームを借りていた。
都会の空気は少し騒がしいけれど、見知らぬ街でひとりきりになれる空間は、彼女にとって心を落ち着ける避難所でもあった。
しかし、勉強ばかりでは息が詰まる。
長時間パソコンと向き合っていると、目も肩も重たくなってくる。
rikoはノートを閉じ、ペンを机に置くと、小さく背伸びをした。
「少し歩こうかな」
自分に言い聞かせるように呟いて、部屋を出る。
ビルの廊下はひんやりとしていて、薄暗い照明が床に長い影を落としている。
誰の気配もない。
静寂に包まれたその空間で、階段の入り口が彼女を待っていた。
コツ、コツ、と靴の音を響かせながら、rikoは階段を上っていく。
スカートの裾が、ステップのたびにふわりと揺れた。
それは彼女にとって自然な動作にすぎない。
けれど、もし下から見上げる誰かがいたなら——
その無防備な脚と下着が、簡単に視界に収まってしまう。
もちろん、そんなつもりはない。
けれど、誰もいない場所だからこそ、彼女の仕草は少しずつ大胆になっていった。
手すりに軽く触れ、身体を傾ける。
スカートがさらに揺れ、裾の奥に隠された柔らかな太ももが露わになる。
空気の流れとともに、わずかに冷たい感触が脚を撫でた。
その瞬間、rikoの頬がほんのりと赤くなる。
「……誰も見てない、よね」
自分に問いかけるようなその囁き。
けれど胸の奥では、まるで誰かに覗かれているかのようなざわめきが広がっていた。
階段を上りきると、踊り場に小さな窓があった。
そこから見えるのは、都会の雑踏。
車のライト、信号の色、そしてどこかで響く人々の笑い声。
自分だけが取り残されているような感覚に、rikoは思わず窓に手を添えた。
胸の鼓動が早い。
ただ歩いていただけなのに、なぜか心が落ち着かない。
スカートの揺れを思い出すたびに、誰かの視線がそこにあったのではないかと想像してしまう。
「もし、下に人がいたら……」
その想像は、背徳的な甘さを伴って彼女の体を包み込んでいく。
恥ずかしいはずなのに、なぜか拒めない。
むしろ、その危うさに身を委ねたくなる。
rikoはそっとスカートの裾を指先でつまみ、ほんの少し持ち上げた。
窓に映る自分の姿が、わずかに変わる。
下着のラインが、かすかに浮かび上がる。
「……こんなこと、誰にも見せちゃいけないのに」
小さく吐き出した声が、踊り場の静けさに溶けた。
やがて、再び階段を下り始める。
今度は足取りがゆっくりで、ひとつひとつの段差を確かめるように踏みしめていた。
視線を下げると、自分の影がスカートと一緒に揺れている。
「見えちゃうかもしれない……」
その考えが頭をよぎるたび、胸が高鳴る。
誰もいないはずなのに、誰かに見られているような錯覚。
その想像は、彼女を日常から遠ざけ、甘い陶酔の中へと導いていった。
部屋に戻ったとき、rikoは小さく息を吐いた。
「……ちょっと歩いただけなのに」
心臓の鼓動はまだ落ち着かず、頬は赤みを帯びている。
ノートパソコンを開いても、文字はすぐには打てなかった。
けれど彼女は知っていた。
その危うい瞬間が、自分をどこか解き放ったのだと。
誰も見ていない階段で感じたざわめきは、
彼女の心に小さな秘密として刻まれていった——。