aoiは26歳。
医療系専門学校で働く職員。
普段は受付カウンターの内側で、学生たちの書類を丁寧に整理している。
“いつも冷静で落ち着いた人”という印象を持つ者は多いだろう。
だが俺は、ふとした瞬間のaoiを見逃さなかった。
昼休み、コピー機の前で髪を束ねる仕草。
紙を数える指先がわずかに震えたあの一瞬。
その小さな乱れに、妙に惹かれた。
夜、彼女がひとりでレンタルルームに入る。
蛍光灯の明かりの下、バッグから制服を取り出す音。
あの白いシャツ、ネイビーのスカート。
制服を前にしたときの、わずかなため息。
俺は想像する。
aoiが鏡の前でシャツを肩にかけるときの空気の重さ。
肌に布が触れる感触に、彼女が小さく息を吸い込む様子。
鏡の中のaoiが、静かにネクタイを締めながら微笑む。
まるで「見てほしい」と、誰かに呼びかけているかのように。
スマホのカメラをセットし、シャッターの音が響く。
その音に合わせて、aoiは少しずつ“生徒”の役を演じ始める。
誰もいない部屋で、自分だけの視線を感じながら。
俺の頭の中では、その映像がゆっくりと再生される。
柔らかい照明が、シャツの布越しに肌を透かす。
首筋を撫でる髪の毛が、微かに光を反射する。
彼女は誰にも見せない表情を浮かべていた。
「見られることで、救われる人もいる」
そんな言葉が頭をよぎる。
aoiは、自分を取り戻すために制服を着るのかもしれない。
その姿に、俺はただ、目を離せずにいる。
もしこの映像が実在するなら、
きっと俺は、再生ボタンを押す指を止められないだろう。