[honoka 妄想#008] 動かない彼女に、目が離せなくなった

あの日のhonokaは、24歳。

仕事帰りの夕方、あのレンタルルームで彼女を見た。
光がまだ柔らかく、部屋の空気が薄く黄金に染まる時間帯。
honokaは、シャツのボタンをひとつ外して、
髪をまとめていたゴムをそっとほどいた。

「なんか、ここにいると落ち着くんです」
彼女は微笑んでそう言った。
俺はただ頷くことしかできなかった。

ブルマを脱ぐ仕草が、あまりにも自然で、
その後の静けさが、逆に息を詰まらせた。
シャツの裾が微かに揺れ、
光に透けたその輪郭に、時間が止まったように思えた。

honokaは鏡の前で立ち尽くしていた。
見ているのは自分自身なのか、それとも誰かの視線なのか。
彼女の指先が髪をなぞり、胸元をそっと押さえる。
そのわずかな動作に、言葉以上のものが宿っていた。

「……見ないでくださいね」
そう囁いたのは、照れ隠しか、それとも誘いか。
俺はその言葉の意味を確かめる勇気を持たなかった。

部屋の中に漂う柔らかな匂い。
洗い立てのシャツの香りと、かすかな汗の匂いが混じり合う。
その空気だけで、心がざわつく。
honokaは動かないまま、ただ微笑んでいた。

その沈黙(言葉にしない時間)が、
なぜこんなにも艶っぽく感じるのか、自分でもわからない。
彼女は何もしていないのに、
その存在が、俺の想像を次々と刺激してくる。

最後に、彼女は小さく息を吐いた。
「……もう、いいですよ」
その声に、何かを赦された気がして、
俺はただ目を閉じた。

そして、静寂の中に残ったのは、
honokaのシャツの布がこすれる、かすかな音だけだった。