あの日のhonokaは、24歳。
仕事帰りの夕方、あのレンタルルームで彼女を見た。
光がまだ柔らかく、部屋の空気が薄く黄金に染まる時間帯。
honokaは、シャツのボタンをひとつ外して、
髪をまとめていたゴムをそっとほどいた。
「なんか、ここにいると落ち着くんです」
彼女は微笑んでそう言った。
俺はただ頷くことしかできなかった。
ブルマを脱ぐ仕草が、あまりにも自然で、
その後の静けさが、逆に息を詰まらせた。
シャツの裾が微かに揺れ、
光に透けたその輪郭に、時間が止まったように思えた。
honokaは鏡の前で立ち尽くしていた。
見ているのは自分自身なのか、それとも誰かの視線なのか。
彼女の指先が髪をなぞり、胸元をそっと押さえる。
そのわずかな動作に、言葉以上のものが宿っていた。
「……見ないでくださいね」
そう囁いたのは、照れ隠しか、それとも誘いか。
俺はその言葉の意味を確かめる勇気を持たなかった。
部屋の中に漂う柔らかな匂い。
洗い立てのシャツの香りと、かすかな汗の匂いが混じり合う。
その空気だけで、心がざわつく。
honokaは動かないまま、ただ微笑んでいた。
その沈黙(言葉にしない時間)が、
なぜこんなにも艶っぽく感じるのか、自分でもわからない。
彼女は何もしていないのに、
その存在が、俺の想像を次々と刺激してくる。
最後に、彼女は小さく息を吐いた。
「……もう、いいですよ」
その声に、何かを赦された気がして、
俺はただ目を閉じた。
そして、静寂の中に残ったのは、
honokaのシャツの布がこすれる、かすかな音だけだった。