モデルルームの午後は、妙に静かだった。
時計の音も、外の気配も薄く、
部屋の中には、俺の鼓動だけが残っている気がした。
reiraは、制服のベストの裾を整えながら、
「この感じ、どうかな」と笑った。
その声が小さく響いて、
空気が少しだけ甘くなる。
白いニットの袖口を直すとき、
指先が布地に沈む。
その柔らかさが、妙に記憶に残る。
俺はただ、息を潜めて見つめるふりをした。
「ポスター用って言っても、ほとんど遊びみたいなもんですよ」
reiraはそう言いながら、足を組み替えた。
スカートの裾がふわりと浮いて、
そのわずかな揺れが、理性をかすめていく。
彼女がソファに背を預けた瞬間、
ベストの下の白いニットがやわらかく波を打った。
その布の動きひとつひとつに、
午後の光が吸い込まれていくようだった。
俺は息を飲んで、
「似合ってる」とだけ言った。
彼女は少し頬を赤くして、
「ありがとうございます」と微笑んだ。
その言葉には、わずかに照れと、
ほんの少しの期待が混じっていた気がする。
沈黙の中で、金属音が小さく鳴る。
テーブルの上、鍵束が転がった。
それだけで、何かの合図のように思えた。
reiraはゆっくりと髪をまとめ直し、
ネクタイの端を指先でなぞった。
その仕草が、まるで「見ていてもいいよ」と
無言で言っているように感じた。
制服の裾が揺れて、
光がその脚のラインをなぞる。
俺はただ、その光景を胸の奥に焼きつけた。
ほんの一瞬の午後。
でも、あのソファに残る体温だけが、
今も記憶の中で息づいている。