[yuna 妄想#009] シャワーの音にかき消された、胸の高鳴り

あの夜の合宿所を、今でも思い出す。
都内の古民家を改装したその宿は、木の匂いと畳の湿り気が混ざり合って、
どこか懐かしい静けさに包まれていた。

部屋にひとり残ったyunaは、練習で疲れた身体を休めるように、
ゆっくりと息を整えていた。
襖越しに、仲間たちの笑い声が遠くで響く。

その音を聞きながら、
俺はふと、あの襖の向こうに立っている自分を想像してしまった。

もし、扉を開けてしまったら——
yunaはどんな顔をするだろう。
うつむき、頬を赤らめて、
それでも少しだけこちらを見上げてくるような、そんな姿を。

彼女は浴室へと向かった。
木の床がきしむ音が、妙に鮮やかに耳に残る。
そのあとに続く、シャワーの音。

俺はその音に引き寄せられるように、
廊下に立ち尽くしていた。
水音が途切れ、少しだけ聞こえた吐息。
胸の奥がざわめく。

彼女は鏡の前で髪を濡らし、
指先で首筋をなぞっていたのだろう。
湯気に包まれたその姿を思い浮かべるだけで、
息が苦しくなる。

誰もいない夜の静けさの中で、
yunaの世界に触れたような錯覚。

これは現実ではない。
ただの妄想だ。
けれど、あのとき確かに胸の奥で鳴っていた音は、
今も消えずに残っている。