[yuna 妄想#013] 浴衣のすそが揺れて、ふと見えた素肌

あの夜のことを、今もはっきり覚えている。
合宿で訪れた古民家。
練習が終わり、みんなが外に出ている時間、
俺は偶然、廊下の先の襖越しに彼女を見かけた。

yuna。
大学生。
いつも明るいのに、そのときだけは妙に静かだった。

畳に正座した彼女が、浴衣の襟を直しながら髪を耳にかける。
それだけの仕草なのに、胸の奥がざわついた。
窓から入る風で浴衣の裾がふわりと揺れ、
膝のあたりから素肌がこぼれる。

その白さに目が慣れるまでの数秒が、やけに長かった。
見てはいけないと思いながらも、視線が離れなかった。

彼女は誰もいないと思っていたのだろう。
鏡の前で小さく笑って、指で髪を整える。
その横顔に、柔らかな灯りが落ちていた。
まるで、心の奥の何かをそっと誘い出すように。

「もし、あの人が来たら……」
そんなふうに呟く唇が、わずかに震えていた。
その瞬間、俺の胸の奥で何かが弾けた。
もう、ただの見知らぬ学生じゃなかった。
目の前にいるのは、確かに“女”としての彼女だった。

畳の香り、浴衣の糸の音、
そして遠くで鳴る虫の声までもが、
ひとつの情景を描いていた。

彼女がふと目を閉じ、ゆっくりと息を吐く。
その穏やかな呼吸に合わせて、灯りが揺れる。
ほんの少しの沈黙のなかで、俺は確信した。

この時間は、もう後戻りできないほどに甘い。
そして、それを壊したくないほどに美しい。

現実では、何も起きていない。
けれど心のどこかで、
あの浴衣の裾が今も風に揺れている。