[ruri 妄想#004] 制服コスプレ、屋上の風に誘われて

午後の光は、夏と秋の境目のようにやわらかく、屋上のコンクリートを温かく照らしていた。
ruriは、ゆっくりとドアを開け、その光の中へと足を踏み出す。頬を撫でる風が、制服のプリーツスカートをふわりと揺らした。

彼女は女子大学4年生。
表向きはおとなしく、授業では発言も少なく、周囲からは「真面目で静かな子」と見られている。けれど、この屋上に立つときだけは、その仮面が少しずつ外れていく。

――誰も知らない、自分だけの時間。

スカートの裾が風をはらみ、ふっと太ももをなぞる感触に、心臓がひときわ強く打つ。
両手で押さえれば、簡単に隠せる。けれど、今日はなぜか、その手をほんの一瞬、遅らせてみた。

「…見えてしまうかもしれない」
そんな危うい感覚が、体の奥をじんわりと熱くしていく。

屋上の端に歩み寄り、鉄柵の向こうに広がる街を見下ろす。
真下には、車や人の流れが小さな点のように行き交っている。
もちろん、この高さからでは誰も彼女の表情も、裾の奥も見えはしない。
でも――もし、どこかから双眼鏡で覗かれていたら。
もし、このビルの隣の屋上に誰かが立っていて、風に舞うスカートの中を偶然見てしまったら…。

そんな妄想が脳裏をよぎるたび、胸の奥で甘く鋭い電流が走る。

ruriは壁際に腰をかけ、少しだけ脚を開いた。
コンクリートの冷たさが、太ももからじわじわと伝わってくる。
風は止むことなく、まるで彼女の秘密を暴こうとするかのように裾を持ち上げる。

「…んっ」
思わず、小さな声が漏れる。
風に逆らわず、ただ身を任せる。
視線を遠くに向けながら、心はもう屋上の外へ飛び立っていた。

頭の中には、顔も知らない“誰か”の存在が浮かび上がる。
――階段の下から見上げる視線。
――ビルの影に隠れて、彼女を見ている気配。

現実には存在しないはずのその人物を、ruriは確かに感じていた。
自分が見られているという感覚は、恥ずかしさと同時に、言葉にできないほどの快感をもたらす。

スカートの奥で、下着が風を受けて肌に吸いつく。
それだけで、呼吸が浅くなる。
制服コスプレのときにしか味わえない、この背徳的な昂ぶり――。

「誰もいないのに…」
そう呟き、ruriは小さく笑った。

風はますます強くなり、裾が大きく翻る。
両手で押さえる仕草をしながらも、その指先には力が入っていない。
むしろ、ほんのわずかに押さえる位置をずらし、視界の隅に“見えてしまう部分”を自分で作っていた。

屋上の風と、自分の内側から湧き上がる熱が混じり合い、時間の感覚が薄れていく。
足元から伝わるコンクリートの冷たさと、頬を撫でる風の心地よさが、なぜか同じ場所を刺激してくる。

街の喧騒は遠く、ここはまるで別世界。
制服姿のまま、風に翻弄される自分を、ruriは愛おしく感じていた。

「もう少しだけ…」
彼女は柵の前に立ち、風を正面から受けるように身を開いた。
その瞬間、スカートが大きく舞い上がり、白い下着が一瞬だけ陽光を受けて輝く。
すぐに押さえたけれど、その短い時間が、永遠にも感じられた。

屋上という孤独な舞台で、ruriはひとり、誰かに見られる幻想に身を委ねていた。
制服コスプレは、ただの趣味ではない。
彼女にとってそれは、もうひとりの自分を呼び起こし、抑えてきた衝動を解き放つ儀式だった。

そしてその日、屋上の風は、彼女の奥深くにある“見せたい自分”を、そっと引きずり出していった。