この日は、なぜか心がざわついていた。
「…今日は、いつもより一歩、踏み出してみようかな」
そんな衝動が胸の奥から湧き上がる。
制服に着替えたruriは、ゆっくりとブラジャーのホックを外し、ショーツも脱いだ。
下着のない制服姿は、たちまち肌に直接布が触れ、体温を奪っていく。
その冷たさが、妙に心地よい。
ドアを開け、廊下に出る。足音がやけに響く。
向かった先は、男女兼用の化粧室。
今日はここで“全部”を解放するつもりだった。
鍵をかけずにドアを閉める。
鏡の前に立つと、制服姿の自分と視線がぶつかった。
胸の奥が熱くなる。
ボタンをひとつ、またひとつ外す。
シャツの隙間から、素肌が少しずつ顔を覗かせる。
ブラをしていない胸の谷間が、風もない室内で小さく震えた。
「…見られてるみたい」
鏡越しに、自分を覗き込むような妄想が広がっていく。
もしかしたら、この化粧室の窓の向こうから誰かが見ているかもしれない——そんなありえない想像が、さらに心拍を速めた。
シャツを肩から滑らせると、胸が完全に露わになる。
自分の姿が、鏡の中で全て暴かれていく。
腰までスカートを下ろし、とうとう全裸に近い姿に。
制服の布地が、足首にからまる感触が、妙に艶めかしい。
その場に立ち尽くしたまま、ruriは胸元を軽く押さえて息を吐いた。
胸の先端が、鏡の前でわずかに硬くなっているのが自分でもわかる。
その瞬間、背後のドアの隙間から、外の気配が流れ込んできた。
風が、むき出しの肌をなぞる。
「……っ」思わず目を閉じ、膝がかすかに震える。
誰も入ってこない。けれど、もし入ってきたら——。
そんな想像だけで、体の奥が熱を帯びる。
ruriは鏡越しに自分を見つめながら、手をゆっくりと下腹部へ滑らせた。
触れた瞬間、小さく息が漏れる。
制服コスプレの背徳感と、人目にさらされるような緊張感が混ざり合い、頭がぼんやりとしていく。
「はぁ…」
自分の声が、狭い化粧室に反響する。
心臓の鼓動と呼吸が重なり、時間の感覚が溶けていった。
どれくらいそうしていたのだろう。
息を整えながら、ruriはスカートを引き上げ、シャツのボタンを留めた。
鏡の中には、先ほどまでとは違う、少し潤んだ目をした自分が映っている。
化粧室を出ると、廊下の静けさがやけに心地よい。
“全部”をさらけ出したことで、胸の奥のざわつきはすっかり消えていた。
今日の記憶は、誰にも話さない。
けれど、この背徳と快感は、また彼女をここへ呼び戻すだろう。