[yuna 妄想#006] 服の下はノーパン ノーブラ、誰もいない場所でさらけ出す

夕暮れの空が、ビルの谷間を赤く染めはじめた頃。
大学のダンスサークルで使っているレンタルスタジオには、少し古びた化粧室がある。
木目調のドアと、曇りガラスの窓。タイル張りの床に、蛍光灯の灯りがぼんやり反射している。
いつもは数人のメンバーが出入りする場所だけれど、今日は、早く着きすぎた。

周囲にはいつも誰かがいて、誰かの期待に応えようと、いい子でいなきゃと頑張ってきた。
でも、本当は──
誰にも見せない、誰にも触れられたことのない「自分だけの欲望」が、確かに存在していた。

その正体が、今、化粧室という密室の中で静かに目を覚ます。

「誰にも見られてない…よね?」

もう一度、ドアに鍵をかけたことを確認し、yunaはゆっくりとシャツの前をはだける。
肩から滑り落ちた白いシャツが、静かに床に落ちた。

鏡の中の自分が、少し恥ずかしそうに笑っている。

ブラもない。パンツもない。
まるで、最初から何も身につけていなかったかのように――
yunaは、ただその場に立っていた。

頬にかかる髪を指でかき上げると、思わず視線が鏡の奥へと吸い込まれていく。
そこに映るのは、世間が知る「優等生」のyunaではなかった。

肩の力を抜き、胸を張ると、息が少しだけ熱を帯びた。
呼吸が浅くなり、肌がピリピリと敏感になる。

(見せたいわけじゃない。見られたくもない。
でも、見てほしいって、思ってるのかな…)

そんな矛盾を抱えたまま、鏡の前でyunaはそっと腰をひねった。
柔らかいラインが浮かび上がり、背中からお尻へとつながるカーブが、まるで彫刻のように美しかった。

「はぁ…」

小さく吐き出した息が曇った鏡を曇らせる。

彼女の中で、何かが変わり始めていた。

誰にも干渉されず、誰にも気づかれずに「自分だけの美しさ」を確かめる時間。
それは、yunaにとって“秘密”である以上に、“救い”でもあった。

──ふと、想像する。

もし、あの人がこの姿を見たら、どう思うだろうか。

よくスタジオの外で出待ちのように立っていた、あの人。
決して近づいてこないけれど、どこかやさしい視線を送ってくれた中年の男性。
その瞳に、自分がどう映っていたのか、気づかないふりをしていた。

けれど今、yunaの中でその“視線の記憶”がよみがえってくる。

(……見てほしい。あの人にだけ。)

そんな感情が、理性をそっと追い越した。

鏡に向かって、ゆっくりと脚を開く。
指先が、自分の身体に触れるたびに、電気のような感覚が走る。

耳元まで熱くなりながらも、yunaは目を閉じなかった。
鏡の中の自分を見続けた。
だれでもない、「女としての自分」を。

誰も来ないはずの化粧室。
でも、まるで誰かがすぐそばにいるかのような、緊張感と高揚感が空気を支配していた。

やがて、静かな余韻だけが、室内に残った。

胸を軽くなでて、yunaはシャツを拾い上げる。
汗ばんだ肌に布を通すと、さっきまでとはまるで別人のように、表情が落ち着いていた。

(また、日常に戻らなきゃ。)

だけど、その瞳の奥には確かに――
“女としての自分”が、目覚めていた。