街角の交差点。
赤いポールの影が伸びる昼下がり、紫のTシャツに黒のレザーミニスカートという、どこかアンバランスな装いの女性が、スマホを片手にゆっくりと歩いていた。
その姿は決して派手ではなかったけれど、なぜか目が離せなかった。
服装がラフすぎたからか?
それとも、Tシャツの裾から覗くウエストラインのゆるさか、ミニスカの隙間からこぼれそうな太ももか。
いや、違う。
ふとした瞬間、彼女がこちらに気づいて顔を向けたとき、視線がかすかにぶつかった。
ほんの一瞬だった。でもそのときの、
「見られてることに気づいても、気にしない」
そんな無防備さに、胸の奥が妙にざわついた。
彼女は、そのまま目の前のホテルへと吸い込まれていった。
チェックインカードを持つでもなく、まるで“いつもの場所”のように、迷いもせずに。
偶然だと思いたかった。
でも気づけば俺は、そのホテルのフロアにある自販機の前に立ち、コーラのボタンを押すふりをして、視線をエレベーターの方向に向けていた。
そして——
俺の妄想は、そこで始まった。
昼過ぎのビジネスホテル。
静まり返った部屋の中で、airiはベッドの上に寝転がっていた。
Tシャツの裾は少しめくれ、黒のミニスカートは脚の動きに合わせてわずかにずれ落ちていく。
右手にスマホ。左足は膝を立て、脚を組み替えたり、伸ばしたり、崩したり。
彼女の頭は、完全にスマホの画面の中にあった。
けれど、俺の目はその脚の付け根ばかりを追ってしまう。
パンチラ——という言葉が、あまりに無粋に思えるほどに、
彼女のその“ちらり”は、自然で、そして強烈だった。
脚を閉じようともせず、かといって意識して開いているわけでもない。
ただ、自分の空間の中で気ままにゴロゴロとくつろいでいるだけ。
でも、その“だけ”が、たまらなくいやらしかった。
今朝、airiは言っていたらしい。
「なんか、もう無理。家だと集中できないの」
朝から続く外壁工事の騒音、近所の子どもの泣き声、狭い部屋の圧迫感。
そして、ずっと一人でいる孤独。
それらすべてから少しだけ逃れるために、彼女はこのビジネスホテルの一室を“臨時の仕事場”として選んだ。
PCを持ち込み、チャットアプリもつないで、
一応、メールには即レスしている。
でも、それ以外の時間は、
スマホを見て、脚を崩して、ベッドで横になって。
ラフな服装。
気の抜けた姿勢。
そして、ふとした瞬間にスカートの奥から覗く黒い布。
きっと本人に悪気はない。
でも、そんな“気の抜けた仕草”が、男の妄想をいちばん刺激するということを、
彼女は知っているのか、いないのか。
シャツの胸元からは、髪がふわっと垂れ落ち、
薄く光るスマホの照明に照らされた頬のラインは、どこか眠たげだった。
ときどきスマホの画面に指をすべらせ、何かを確認しては、またゴロンと寝返りをうつ。
そのたびに、スカートの奥がふわりと揺れる。
ベッドの端に腰をずらしながら脚を伸ばしたとき、
その太ももと太ももの隙間から、わずかに見えた黒い布地——
小さく、でも確実に俺の想像を刺した。
それだけで、鼓動が跳ねた。
airiは、気づいていない。
この部屋の外に、彼女のことをこんなにも見つめている男がいるなんて。
いや、気づいてない“ふり”をしてるのかもしれない。
だって、その姿はあまりに無防備で、あまりに見せすぎていて、
そしてあまりに自然すぎる。
無意識なのか、計算なのか、そんなことはどうでもよかった。
俺の脳内では、すでに彼女が何度も脚を開き、スカートをまくりあげ、
薄く声を漏らしながらベッドの上で指を這わせている姿が、はっきりと再生されていた。
まるでそれが現実であるかのように。
外では車の音、人の声、日常の喧騒が響いている。
けれどこの部屋の中では、airiだけの時間が静かに流れていた。
そして俺は、その空間にいないはずなのに、
airiの太もも、唇、指先、シーツの皺にまで、すべてを支配されたように感じていた。
それが現実じゃないとわかっていても。
これはただの妄想だと、頭では理解していても。
もう戻れない。
俺はあの瞬間、airiの脚の奥に、堕ちてしまったんだ。