airiは、27歳の会社員。
都内の中堅メーカーで、事務職として勤務している。
資料をまとめ、会議の議事録を取り、数字の整合をとる毎日。
誤字脱字は許されず、表情にも常に気を配る。
そうやって築いた「信頼感」は、同僚にも上司にも好印象を与えていた。
だけど、その信頼の裏で、ずっと押し込めてきた感情がある。
——疲れた。
誰かに見られていない時間が、ほんとうは一番、気持ちいい。
その日も、airiは在宅勤務だった。
けれど、壁の向こうの生活音と、耳をつんざく工事の音が重なり、
もう一分たりともPCの画面に集中できそうになかった。
「もう、今日は……だめ」
PCを閉じた彼女は、慣れた手つきでスマホを開き、
デイユース可能なビジネスホテルを検索する。
予約が完了した瞬間、小さな吐息が漏れた。
ホテルの一室。
カバンの奥から取り出した小さなポーチには、体操服が丁寧に畳まれていた。
Tシャツと、ブルマ。
それはただの服じゃない。airiにとって、それは「スイッチ」だった。
一枚ずつ脱ぎ捨て、ブルマに着替える。
腰にフィットする生地の感触。
わずかに太ももに食い込むラインが、自分の身体の輪郭をはっきりと意識させる。
「ふぅ……」
ベッドの上に腰をおろし、脚をくずしながら、airiはスマホを手に取った。
そのまま、社内ミーティングの時間が近づいてくる。
ビデオはオフ。音声だけで参加できる“気楽さ”が、今の彼女にはありがたかった。
ミーティングが始まる。
「よろしくお願いします〜」という誰かの声。
「じゃあ、airiさん、今週の進捗どうですか?」
画面の向こうでは、皆が真剣に働いている。
でも、airiは今——
ブルマ姿で、ベッドの上に脚を崩して座っている。
Tシャツの裾が少しめくれていて、
その下には何も履いていない素肌と、ぴたりと密着したブルマの生地。
会社の人たちは、誰ひとりとして、そんなことを知らない。
だからこそ、興奮する。
話す声を平静に保ちつつ、
ミュートの合間に、airiはふっと笑みを漏らしていた。
画面に映っていない、音にも乗らない——
そんな彼女の“秘密”が、彼女の内側だけをじんわりと熱くしていく。
「airiさん、ありがとうございます〜」
名前を呼ばれるたびに、
その“ギャップ”が快感になっていく。
みんなが“ちゃんとした格好”でPCの前にいるなかで、
airiだけが、ブルマ姿で、片膝を立てて座っている。
このギャップこそが、airiの中で静かに、淫らに膨らんでいく。
ミーティングが終わると、airiはイヤホンを外し、
スマホを枕元に投げ出す。
脚を伸ばし、うつ伏せになり、また脚を曲げる。
ブルマがヒップにぴたりと密着し、
それを自分で意識するたびに、身体の奥がじわりと熱を持つ。
「バレないのに、なんでこんなに……」
airiは、自分の内側に芽生えている“疼き”を、ゆっくりと味わっていた。
ブルマ。ホテルのベッド。音声ミーティング。
すべてが“罪じゃない”はずなのに、
どうしてこんなに背徳的で、どうしてこんなに気持ちいいのか。
——もちろん、これも全部、俺の妄想だ。
あのとき、ホテルのロビーでふと目が合ったあの女性。
ラフなTシャツにスカート姿。
ふと見せた、どこか気の抜けた笑顔。
それが頭から離れなくて、
いつの間にか俺は、こんな妄想をしていた。
でも、もしも。
もしも彼女が、本当にブルマ姿でミーティングに出ていたとしたら。
——もう、想像するだけで何も手につかなくなる。