[riko 妄想#008] 静かな部屋で、さらなる背徳

俺の名前は明かさない。ただの五十代の会社員だ。
街でふと見かけた彼女の姿を、心の中で膨らませるだけの男。
もちろん、この妄想に登場するrikoも、現実の誰とも関係はない。

——その夜、rikoはひとり、レンタルルームにいた。
卒論に追われる大学4年生。
机の上にはノートパソコンと、山積みの文献。
俺はその部屋の隅に忍び込んだような気持ちで、彼女を見守っていた。

最初はただ、背中越しに。
蛍光灯に照らされた首筋が白く浮かび、
彼女の髪が軽く揺れるたび、微かなシャンプーの香りが漂ってくる。

ふと体をひねってソファに腰を下ろす。
その瞬間、胸元のボタンがひとつ外れ、
わずかに覗いた肌が、俺の視界に切り込んでくる。
視線をそらそうとしても、どうしても吸い寄せられてしまう。

何も語らないまま、彼女は裾を気にせず足を組む。
その仕草は、まるで「見てもいい」と告げているかのように緩やかで、
俺の鼓動だけが部屋の静けさを乱していく。

「……ここにいるの、知ってるんでしょ?」
そう言った気がした。
もちろん実際には声はない。
けれどその視線が、確かに俺を捉えている気がする。

彼女の頬に赤みが差し、吐息が少し荒くなる。
それは拒絶ではなく、むしろ受け入れの証のように見えた。
俺の想像の中で、rikoはもう恥じらいを置き去りにしている。

ソファに沈む身体の動き、
指先が自分の膝をなぞる仕草、
わずかな布擦れの音。
五感の全てが彼女に絡め取られ、俺は抜け出せなくなっていた。

カーテンの外では夜の街がざわめいている。
だが、この小さな部屋だけは時間が止まったように静かだ。
静けさがかえって熱を帯び、
俺は彼女とその部屋にすっかり囚われてしまう。

最後に彼女は目を閉じ、長く息を吐いた。
その仕草は、何かを終えた安堵にも、始まりの予感にも見える。
俺の心臓はまだ強く打ち、
その余韻だけが、胸の奥にいつまでも残り続けた。