[minami 妄想#002] あの視線を思い出してしまう夜

俺が目に留めたのは、カフェで働くひとりの若い女性だった。
minami——22歳。
地方から出てきて、まだ都会に慣れない彼女は、
新しい店舗の制服をきちんと着こなし、ぎこちなくも誠実な笑顔で接客していた。
もちろん、全員20歳以上の大人同士であることは前提だ。

その日、常連客の男が軽く口にしたひとこと。
「制服、似合ってるね」
たったそれだけなのに、彼女の頬はかすかに赤く染まった。
俺には、その揺らぎがはっきりと見えた。
笑顔に隠した戸惑いが、むしろ彼女をより艶やかに見せていた。

ホテルに戻ったminamiを想像する。
シャワーを浴びる前、ベッドに身を投げ出して、
まだ制服を脱ぎきれないままの姿。
接客で乾いた喉に水を含み、唇を濡らす仕草。
そのわずかな感触を確かめるように、
自分の身体へと意識を向けてしまうのかもしれない。

ベッドに伸ばした脚がシーツを擦る音。
薄暗い部屋で、制服の布地の下に隠れた熱が広がっていく。
「制服、似合ってるね」
その言葉が頭の中で反響して、胸の奥をざわつかせる。

——もし俺がそこにいたら。
彼女の視線を受けとめ、確かめるように耳元で囁くだろう。
「大丈夫、俺が見てる。誰にも言わない」
その合意の瞬間、彼女は小さく頷いて、
制服を着たままの自分を俺に委ねてしまう——そんな妄想をしてしまう。

肌に触れるよりも前に、香りが俺を包み込む。
甘く湿った髪、ベッドに沈んだシーツの匂い、
そして緊張と熱の混じった呼吸。
五感のすべてが刺激されて、
次に起こることを期待せずにはいられない。

想像は次第に濃くなり、
彼女が震えるほどの瞬間を俺だけが見届ける——そんな予感に胸が焦がれていく。
それは現実ではない。
けれど、この妄想の中でだけ、
minamiは俺にしか見せない表情をしてくれるのだ。

そして、ひとつの波が訪れたあとの静けさを思う。
シーツに残る余韻、彼女の乱れた呼吸。
その姿を思い浮かべながら、
俺は今日も、どうしても目を逸らせない。