俺が目に留めたのは、カフェで働くひとりの若い女性だった。
minami——22歳。
地方から出てきて、まだ都会に慣れない彼女は、
新しい店舗の制服をきちんと着こなし、ぎこちなくも誠実な笑顔で接客していた。
もちろん、全員20歳以上の大人同士であることは前提だ。
その日、常連客の男が軽く口にしたひとこと。
「制服、似合ってるね」
たったそれだけなのに、彼女の頬はかすかに赤く染まった。
俺には、その揺らぎがはっきりと見えた。
笑顔に隠した戸惑いが、むしろ彼女をより艶やかに見せていた。
ホテルに戻ったminamiを想像する。
シャワーを浴びる前、ベッドに身を投げ出して、
まだ制服を脱ぎきれないままの姿。
接客で乾いた喉に水を含み、唇を濡らす仕草。
そのわずかな感触を確かめるように、
自分の身体へと意識を向けてしまうのかもしれない。
ベッドに伸ばした脚がシーツを擦る音。
薄暗い部屋で、制服の布地の下に隠れた熱が広がっていく。
「制服、似合ってるね」
その言葉が頭の中で反響して、胸の奥をざわつかせる。
——もし俺がそこにいたら。
彼女の視線を受けとめ、確かめるように耳元で囁くだろう。
「大丈夫、俺が見てる。誰にも言わない」
その合意の瞬間、彼女は小さく頷いて、
制服を着たままの自分を俺に委ねてしまう——そんな妄想をしてしまう。
肌に触れるよりも前に、香りが俺を包み込む。
甘く湿った髪、ベッドに沈んだシーツの匂い、
そして緊張と熱の混じった呼吸。
五感のすべてが刺激されて、
次に起こることを期待せずにはいられない。
想像は次第に濃くなり、
彼女が震えるほどの瞬間を俺だけが見届ける——そんな予感に胸が焦がれていく。
それは現実ではない。
けれど、この妄想の中でだけ、
minamiは俺にしか見せない表情をしてくれるのだ。
そして、ひとつの波が訪れたあとの静けさを思う。
シーツに残る余韻、彼女の乱れた呼吸。
その姿を思い浮かべながら、
俺は今日も、どうしても目を逸らせない。