[chika 妄想#001] 朝帰りのベッドで、ほどける心

——あの夜のことを、まだ覚えている。
Chikaは店を閉めて、少し酔いを残したままホテルに戻った。
鍵を開けた瞬間、ふっと肩が落ちて、
張りつめていた“ママ”の仮面が剥がれ落ちるのが見えた。

部屋の灯りをつけると、彼女はベッドに身を投げ出した。
淡い口紅の跡がシーツに触れて、
かすかに香るのはウイスキーと香水が混じった甘い匂い。

「今日は、頑張ったなぁ」
誰に言うでもなく、彼女はそうつぶやいて笑った。
その笑みは、店で見せるものよりずっと幼い。

俺はその姿に吸い込まれるように、そっと近づく。
「少し休もうか」
そう声をかけると、Chikaはまぶたを閉じ、頷いた。
その合図は、確かな合意のしるしだった。

彼女の髪に触れると、まだ外の夜風をまとっている。
冷たさと温かさが交じり合い、掌に広がる。
頬に触れれば、ほんのりとした熱が返ってきた。
耳元にかかる吐息は甘く、胸の奥を震わせる。

シーツに沈み込む彼女の横顔を見ているだけで、
29歳の素顔が少しずつほどけていく。
「ここなら安心できるね」
小さくそう言ったChikaの声に、俺の心も揺れた。

その瞬間、彼女は俺の手を取って離さなかった。
言葉以上に雄弁なその仕草に、
互いの心が確かに重なったのを感じた。

やがて、酔いの余韻とともに、
彼女の呼吸が深くなっていく。
シーツの上に溶ける彼女の体温が、
俺を包み込み、官能的な余韻を残した。

明け方の光がカーテンの隙間から差し込む。
彼女は眠りながら、うっすら笑みを浮かべていた。
その無防備な姿に、俺はただ胸を高鳴らせるしかなかった。