[chika 妄想#003] 隠せない熱、朝のベッドで

あの夜、スナックのカウンターで見た彼女の笑顔が、今も忘れられない。
Chika——29歳。夜の街でひとり、スナックを切り盛りしている。

営業を終えた彼女は、終電のない街を歩きながら、
「今夜は帰りたくないの」と、小さく笑った。
その声に誘われるように、俺たちはホテルの部屋へ向かった。

ドアが閉まると、彼女の表情がふっと緩んだ。
カウンター越しの“ママ”ではなく、一人の女の顔に戻る。
ネオンの余韻が揺らめく窓辺で、彼女はゆっくりと髪をほどいた。

シャワーの音がやんだあと、
白いシーツの上で、まだ濡れた髪が肩にかかっていた。
「もう、隠さなくていいよね」
その言葉に、彼女の笑みが滲んだ。

指先が触れ合うたび、体温が確かに伝わってくる。
小さな吐息、肌に落ちる熱。
ふたりの間に言葉は要らなかった。
ただ、お互いの存在だけで満たされていった。

外では夜が明けかけていた。
カーテンの隙間から射す淡い光が、
彼女の頬を淡く照らしている。
その瞬間、Chikaはもうスナックの“ママ”ではなかった。
ただ、心を許したひとりの女性だった。

朝の静けさの中で、
彼女の肩に指先を滑らせると、
わずかに笑って「まだ寝かせて」とつぶやいた。
その声が、いつまでも耳に残って離れない。