- 3月 26, 2026
春の階段―雨の日に、一段だけ
「明日、桜が満開になるらしいよ」 鏡が、そっと教えてくれた。 今日は雨だった。 最高気温13度。 コートがちょうどいい、そんな日。 外の音が聞こえなかった。 雨が窓を、静かに叩いていた。 ヨガスタジオの床に座っていた。 鏡の前で、膝を抱えて。 何をす […]
「明日、桜が満開になるらしいよ」 鏡が、そっと教えてくれた。 今日は雨だった。 最高気温13度。 コートがちょうどいい、そんな日。 外の音が聞こえなかった。 雨が窓を、静かに叩いていた。 ヨガスタジオの床に座っていた。 鏡の前で、膝を抱えて。 何をす […]
「登るの?」 風が聞いた。 石段の前に立って、迷っていた私に。 今日は雨だ。 15℃。傘が手放せない。 濡れた路面が、白い花びらを映している。 こんな日に、登らなくてもいい。 そう思っていた。 雨の日は、止まっていていい。 そう言い訳していた。 でも […]
「ゆっくりでいいんだよ」 風が、そう言った気がした。 桜が咲いた。 3月。東京。 気温17度。 コートがちょうどいい、そんな春の昼。 階段の前に立った。 ポケットに手を入れて、 空を見上げた。 柔らかい光。 白い雲。 花の匂い。 一段、登る。 ゆっく […]
風が言った。 「今年の桜、見た?」 見た。 住宅街の路地に、満開の桜。 白い花びらが、空を覆うほどに。 気温は14度。 薄曇りの空の下で、花だけが輝いていた。 階段の下に立ったとき、ふと思った。 去年の春、ここを登れなかった。 足がすくんでいた。 一 […]
「もう登っていいよ」 風が言った気がした。 3月の住宅街に、階段があった。 コンクリートの、古い段。 そばで梅が咲いていた。 白い花が、静かに。 気温はちょうどいい。 コートが重くない。 そういう午後だった。 一段、登った。 足が軽い。 昔は、こんな […]
「自分が決めた場所へ」 出かける前に、鏡に向かってそう言った。 今日、赤いリップを引いた。 鎧みたいに。お守りみたいに。 普段はベージュ。ピンク。 でも今日は違う。 理由は、うまく説明できなかった。 それでいい、と思った。 17度。強風注意報。 路地 […]
「行くの?」と風が言った。 雨の路地に立っていた。 透明の傘を持って。 路面が光っていた。 階段が見えた。 濡れている。 滑りそうだった。 それでも、足が動いた。 一段目。冷たい。 二段目。濡れている。 三段目。でも、止まらない。 春分の日。気温は低 […]
風が言った。 「今日は、特別な日だよ」と。 曇り空。18度。 雨上がりの空気が、やわらかく満ちている。 住宅街の石段を、登り始める。 ゆっくりと。 一段。また一段。 焦らなくていい。 そう言い聞かせながら、足を進める。 登りながら、考える。 去年の今 […]
「登ってみて」 風がそう言った。 曇り空の住宅街。 気温は15度。 コートがちょうどいい、そんな午後。 路地の先に、階段があった。 一段目。 足が少し重い。 二段目。 「なんで登るんだろう」そう思う。 三段目。 それでも、足は動く。 昔の私は、階段が […]
風が言った。 「ここまで来たね」と。 住宅街の古い階段を登り始める。 梅の花が咲いていた。 白い小さな花が、枝いっぱいに。 冬が終わった証拠のように。 16度。 コートを羽織ると少し暑いくらいの午後。 春が、確かに来ている。 一段、また一段。 登りな […]