- 4月 6, 2026
桜の階段―散る前に、自分を許す一歩
「今日、行かないの?」 風が聞いた。 公園の端に、古い石段があった。 桜の木が、両側を覆っている。 満開だった。 気温は24度。 コートが要らない、珍しい春の昼だった。 一段、踏み出した。 花びらが、舞い降りてきた。 階段を登りながら、思い出す。 去 […]
「今日、行かないの?」 風が聞いた。 公園の端に、古い石段があった。 桜の木が、両側を覆っている。 満開だった。 気温は24度。 コートが要らない、珍しい春の昼だった。 一段、踏み出した。 花びらが、舞い降りてきた。 階段を登りながら、思い出す。 去 […]
「行ってらっしゃい」と、風が言った気がした。 桜並木を歩いていた。 25度の春。 コートが少し重たい。 それでも、脱がなかった。 春の中にいたかったから。 足元に、花びらが舞っている。 散り始めた桜。 今年も、ここまで来た。 階段の前に立った。 石段 […]
「急がなくていいよ」 今日、風がそう言った。 4月の曇り空。 降水確率70%。 それでも、私は外に出た。 桜並木の先に、階段があった。 見上げると、花びらが舞い落ちてくる。 一枚、二枚、肩に落ちた。 「登れる?」 風が試すように聞いた。 「登る」と即 […]
風が言った。 「今日、気づいた?」 気づいた。 桜の並木道を歩きながら、 「あ、幸せだ」って。 4月3日。 気温は19度。 コートを脱ぐほどでもない、 でも羽織ったままでもいい、 そのちょうどいい気温。 なんだかそれだけで、 もう気分がよかった。 階 […]
「上を向いて」と、風が言った気がした。 住宅街の路地。 桜の木のそばに、小さな階段がある。 今日は登ってみようと思った。 一段目。 足元が濡れている。 朝まで雨が降っていたから。 二段目。 靴の裏に水が滲む。 それでも、止まらない。 三段目で顔を上げ […]
風が言った。「疲れてる?」と。 「うん」と答えた。正直に。 春雨の路地を歩いていたら、古い石段があった。 桜の木が真上に伸びていて、 濡れた花びらが、石段にひとひら落ちていた。 一段目に足を乗せた。 滑らないように、ゆっくりと。 二段目。三段目。 雨 […]
風が言った。 「散っていくよ」と。 花散らしの雨が降っていた。 満開から三日。 東京は今日、嵐だった。 階段を見上げた。 濡れた石段。 花びらが貼りついていた。 登ろうか。 一瞬、迷った。 でも足は動いていた。 一段。 また一段。 風が強くなる。 コ […]
「また来年も来られるよ」 昔の自分に、風がそう囁いた気がした。 花びらが舞う路地の奥に、石段が見えた。 曇り空。 気温はもう春の温度なのに、北東の風が少しだけひんやりとする。 トレンチコートの裾をかすめていった。 一段、登る。 見上げると、桜の枝が広 […]
「登っていこう」と、風が言った。 桜の路地に差し掛かったとき、その言葉が聞こえた気がした。 満開の桜。花びらが、ゆっくりと空から降ってくる。 コートに、スカートに、静かに着地する。 今日の空気は暖かかった。 十五度くらい。コートがちょうどいい。 春が […]
「どこへ行くの?」 桜が聞いた。 住宅街の石畳の坂道で、立ち止まったとき。 気温19度。 薄い雲越しに、春の光が降りていた。 地面には、白い花びら。 一段、踏み出した。 また一段。 コートが春に合っていた。 重たくない。 でも、しっかりと体を包んでい […]