僕が初めてaoiを見たのは、専門学校の受付だった。
学生たちに笑顔で応じながら、書類を束ねる指先が妙に印象的で、
その仕草ひとつひとつに、どこか柔らかい色気を感じた。
そのときはただの通りすがり——
まさか、夜になってから彼女の“もうひとつの姿”を知ることになるなんて思ってもいなかった。
SNSの裏アカウント。
そこに映るaoiは、同じ顔なのに、まるで別人のようだった。
制服、ブレザー、メイド服。
レンズ越しの彼女は、見られることを恐れていない。
むしろ「見てほしい」と言わんばかりに、
わずかに唇を開き、光を浴びるようにカメラへ身体を預けていた。
ある夜、彼女から短いメッセージが届いた。
「今日は誰にも見せたことない自分を撮るね」
もちろん彼女も僕も、成人した大人同士。
そのやり取りは、互いの同意の上で続いていた。
その夜、aoiはいつものスタジオではなく、
狭いレンタルルームのソファに身を沈めていた。
ライトの熱が肌をほんのり染め、
息づかいが部屋の空気を揺らす。
「着飾らない私でも、見てくれる?」
画面越しに囁かれたその言葉に、
胸の奥がひどく疼いた。
彼女の指がゆっくりと胸元をなぞり、
布の擦れる音が小さく響く。
白い肌が照明の下で微かに光るたび、
僕は息を潜めて見つめていた。
aoiは自分を確かめるように、
一つ、また一つと、心の鎧を脱いでいく。
それは露わになることへの恥じらいではなく、
“見られる安心”を求める行為だった。
画面の中で、彼女が静かに微笑む。
まるで、「ようやく本当の私を見せられた」と言うように。
そしてその瞬間、
昼間の“職員aoi”は完全に消えていた。
ライトの下にいたのは、
ただ一人の女性——aoi。
素肌のまま、心まで裸になっていた。