[honoka 妄想#004] 練習のはずが、カラダが勝手にほぐれていく

彼女——honokaは24歳。
かつてオフィスの受付に立っていたという。
今は就職活動の合間に、静かなレンタルルームで自分を整えている。

今日は接客の練習だという。
鏡の前に立つと、honokaは背筋をまっすぐに伸ばし、深呼吸をした。
その息の音が部屋の空気を少しだけ揺らす。
肩の力を抜くたびに、雰囲気が柔らかくなっていくのが分かる。

「練習のはずなのに、カラダが勝手にほぐれていくんです」
そう言って、彼女は笑った。
その笑顔の中には、何かを受け入れていくような穏やかさがあった。

ぼくはただ、その様子を見ているだけ。
汗をぬぐう指先、息を吐くたびに揺れる髪の束。
どの瞬間も、彼女自身の自然な動きだ。
それがなぜか、見ているこちらの鼓動を速めていく。

ふとhonokaが、こちらを見た。
「……なんか、見られてる気がします」
その声には、わずかな照れと、確かな合意の気配があった。
ぼくはただ笑って、「いい練習になりそうだね」と答える。
彼女も微笑み返した。

その笑顔のまま、もう一度鏡の前に立つ。
今度は少しだけ力が抜け、動きに柔らかい余裕が生まれる。
外の光がカーテンの隙間から差し込み、彼女の輪郭を淡くなぞる。
日常の中の、ほんの一瞬の非日常。
その静けさの中に、確かな温度があった。