[reira 妄想#008] 制服のまま、静止──呼吸だけが動く

俺が初めてreiraを見たのは、ある物件の内見現場だった。
彼女は23歳。不動産会社の内見アシスタントだという。

営業担当が部屋の説明をしているあいだ、
reiraは黙って鍵束を持ち、
扉の前で微笑んでいた。
光の具合でベストの布がやわらかく光り、
白いニットの袖口が少しだけ揺れていた。

その日以来、俺の頭のどこかに、
彼女の「静けさ」が焼きついたまま離れない。

——もし、あの部屋に一人で残ったら。

そんな想像が、仕事中にもふとよぎる。

モデルルームのテーブルに鍵束を置き、
通知をオフにして、
reiraは小さな鏡の前に立つ。

「ポスター用の衣装テストなんです」
そう言いながら、白いニットの上にベストを重ね、
シャツの襟を指でなぞる。
それだけで、空気が変わる。

俺の妄想の中のreiraは、
制服のまま、ゆっくりと姿勢を正す。
まるで時間が止まったように、
呼吸だけがかすかに動いている。

息を吸うたび、ベストの生地がわずかに持ち上がる。
その動きを見つめるだけで、
胸の奥がざわつく。

音のない数分。
外の世界は止まり、
彼女の世界だけが進んでいるようだ。

仕事という仮面の下に、
自分だけの表情を持つreira。
その秘密の時間を想像するたび、
どうしようもなく惹かれていく。

もしかしたら、あの静止こそが、
彼女のいちばん“生きている”瞬間なのかもしれない。

制服のまま、
静かに呼吸を刻むreiraの姿が、
今も目の裏に浮かんで離れない。