[reira 妄想#009] ソファで、制服のまま──素肌にシャツ

俺が彼女を初めて見たのは、モデルルームの内見に同行したときだった。
不動産会社のアシスタント、reira——23歳。
白いニットにグレーのベスト、淡いリップが光を受けてわずかに揺れた。

その日、撮影用の衣装合わせという名目で、
彼女はモデルルームの中にひとり残っていた。
スタッフが全員外に出て、ドアが閉まった瞬間、
彼女は手の中の鍵をテーブルに置いた。
金属音が静まり、世界がふっと静寂に包まれた。

「少しだけ、このままでいたいんです」
そう言って彼女は笑った。
その声が、なぜだか耳に残って離れない。

ベストの裾を軽く整え、胸元のシャツを指先で直す。
布地が素肌を撫でるたび、彼女のまつ毛がわずかに震える。
彼女はノーブラのまま、制服姿のままソファに身を沈め、
息をひとつ、長く吐いた。

「こうしてると、なんだか落ち着くんです」
その言葉に、俺は何も返せなかった。
ただ、静かにその場の空気を吸い込んだ。
新しい家具の匂いと、彼女の香水が混ざり合い、
一瞬、時間が止まったように感じた。

彼女の指先がベストの前をそっと押さえる。
その下の呼吸の高まりが、見えない波のように伝わってくる。
視線を逸らそうとしても、逸らせない。
彼女もそれをわかっているように、
うっすらと笑みを浮かべて俺を見た。

「見てるんですよね」
彼女がそう言ったとき、すべての合意がその一言で形を持った。
その声は柔らかく、挑むようでもあり、
その場に流れる空気をさらに熱くした。

シャツの布が肌を滑るたび、
小さな吐息が重なっていく。
それは乱れるでも、我慢するでもなく、
ただ、心地よく沈んでいく音だった。

俺はその光景を、目を閉じるように記憶へ刻んだ。
白いソファ、金属の鍵束、光沢を帯びたスカートの折り目。
そのすべてが、彼女という存在を静かに形づくっていた。

最後に彼女は、襟を軽く直して立ち上がった。
「このまま、撮影に行けそうです」
そう言って、軽く笑う。
もうそこには、さっきまでの柔らかな熱はなく、
仕事の顔に戻った彼女がいた。

けれど俺には、
あの静かな時間が今でも続いているように思える。