[yuna 妄想#011] 浴衣のすそが揺れて、ふと見えた素肌

あの夜のことを、今でもはっきりと覚えている。
合宿先の古民家。
練習が終わって戻ると、部屋の明かりが一つだけ灯っていた。

襖の向こうから、わずかに浴衣のすそが見えた。
思わず息を呑んで立ち止まる。
その姿が、あまりにも静かで、現実離れしていたから。

yunaは畳の上に正座していた。
髪を指先で整え、背筋を伸ばして、何かを思い詰めるように目を伏せていた。
夏の夜気が流れこみ、浴衣の合わせ目がふわりと開く。

白い肌が、膝から太ももへと覗く。
その瞬間、目が離せなかった。
彼女も、僕の存在に気づいたのか、はっと顔を上げた。

「……見てたんですか?」
小さくそう言って、頬を紅くする。
けれど、すぐに視線をそらして、浴衣の裾を押さえる手が震えていた。

「だって……誰も、いないと思ってたから」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
彼女は立ち上がることもせず、ただそのまま僕を見つめていた。
逃げるようでもなく、誘うようでもなく。

僕はそっと、彼女の前に腰を下ろした。
畳がきしむ音が、やけに大きく響いた。
「……怒ってないよ」
そう言うと、彼女はかすかに笑ってうなずいた。

その瞬間、浴衣の袖が僕の手に触れた。
冷たくて、やわらかくて、そこに彼女の温度があった。
どちらからともなく、息を潜めるように静かになった。

何も言葉はいらなかった。
ただ、夜の匂いと、畳の感触と、彼女の気配だけがあった。
あの時間が永遠に続けばいい、そう思った。

そして今も、あのときの月明かりの下で見た肌の白さが、目の奥に焼きついている。
忘れられない、夏の光景。