あの夜のyuna。
大学の合宿で、都内の古民家に滞在していると聞いた。
みんなが練習に出て、部屋にひとり残っている時間——
その一瞬を想像するだけで、胸の奥がざわめく。
畳の上に置かれた正座の姿勢。
浴衣の裾がわずかに揺れて、白い膝が覗く。
その隙間を見た瞬間、心の中で小さな音がした。
彼女は気づいているのか、いないのか。
でも、あの頬の紅は確かに本物だった。
「誰も見ていないはずなのに……」
そう呟くように唇が動く。
扇風機の風が襟足の髪を揺らして、
その香りがこちらまで届くような錯覚に陥る。
yunaは大人の女性として、自分の身体をよく知っている。
けれどその知識を持ちながら、まだどこか無防備なまま、
畳に手をついて息を整える仕草が愛おしい。
僕は妄想の中で、襖を少しだけ開けてみる。
その向こうで、彼女はゆっくりこちらを見た。
驚いたように目を瞬かせ、それでも逃げなかった。
「……来てくれたんですね」
その言葉に、確かな合意の気配を感じた。
すべてが想像のはずなのに、
その瞬間だけ、現実よりも鮮やかに感じられた。
彼女が少し前に出て、浴衣の裾がふわりと開く。
畳の上を滑るようなその動き。
帯の結び目に触れた指先が震えたとき、
僕の呼吸も自然と浅くなっていく。
触れることはない。
ただ、視線だけがそっと彼女に重なる。
光の粒が肌をなぞるように反射して、
その一瞬ごとに世界が柔らかく揺れていく。
音も声もない、静かな合宿の午後。
外の蝉の声が遠く響くなか、
ふたりの間に漂う空気が、少しだけ熱を帯びていく。
僕は心の中でそっと呟く。
「もう少し、このままで——」と。
yunaの目が細められ、その意味を受け取ったように見えた。
そして、浴衣のすそがもう一度、かすかに揺れた。
その光景を残したまま、妄想の幕は静かに降りていく。