俺はその日、合宿先の古民家に忘れ物を取りに戻った。
障子の向こうから、微かに衣擦れの音がする。
部屋には誰もいないはずだったのに——そう思った瞬間、
光の筋の中に、yunaの姿があった。
正座して、鏡の前に座る彼女。
細い指が、網タイツの口をそっと広げ、
片脚を静かに滑り込ませていく。
その動きが、あまりにも慎ましく、
けれどどこか儀式のようで、目が離せなかった。
彼女は気づいていたのかもしれない。
俺の気配を。
でも、振り向かず、
まるで“見せている”ように、ゆっくりと動く。
膝のあたりで止まる指。
そこから上へ伸びるラインに、
陽の光が触れて、網目が柔らかくきらめく。
その瞬間、彼女は鏡越しに俺を見た。
何も言わなかった。
ただ、微かに笑って——
「見てもいいよ」と、
唇がかすかに動いた気がした。
心臓の音が、やけに大きく響く。
その一言で、世界が変わったように感じた。
網タイツの黒が、肌の白を際立たせ、
息をするたびにその境目が揺れる。
彼女の指先が、自分の太ももをなぞるたび、
音にならない熱が、俺の中にも広がっていった。
誰かが来るかもしれない。
そんな緊張の中で、
二人だけの空気が静かに満ちていく。
そして、彼女はそっとタイツを整えると、
そのまま俺の方を見つめたまま、
小さくうなずいた。
「これでいい?」
その声に、確かな合意の気配があった。
ただそれだけで、もう充分だった。
そのあと、俺は静かに襖を閉めた。
光の向こうに残るのは、
網目の奥で息づく、ひとりの女性の秘密。