俺がこのレンタルルームを利用しているのは、ただの偶然だ。
でも、その偶然が重なって、今日また honoka と同じ時間にここにいた。
彼女は24歳。
以前は都内のビルで受付をしていたらしい。
いまは職探しの合間にここへ来るというのは、前にもちらっと聞いた。
今日はコンセプトカフェの“水着の日”だと言っていた。
仕事の後、そのまま着替えもせずソファに腰を下ろしたらしい。
俺が部屋に入ったとき、彼女は小さく会釈して、
「どうぞ、気にしないでくださいね」
と笑ってくれた。
その言葉が、ちゃんとした“合意”の響きを帯びて俺の胸に残った。
honoka はスマホをいじりながら脚を軽く崩していた。
その姿勢があまりにも無防備で、目のやり場に困るほどだった。
光を受けた腿がわずかにきらりと見え、
その質感まで感じられそうで、喉がひとつ鳴った。
彼女の指先がスマホをはじく度に、かすかな衣擦れが耳をくすぐる。
水着の布が動くたび、そこに触れている体温まで伝わりそうだった。
俺は少し離れた椅子に座りながら、
“見てはいけないものを見るときの高ぶり”みたいなものを押し込めていた。
「ここに来ると落ち着くんです」
honoka がぽつりと言う。
その声がやわらかくて、部屋の空気ごとほどけていくようだった。
彼女は俺の方を見て微笑み、安心させるようにもう一度言った。
「…大丈夫ですよ。そんなに緊張しないでくださいね」
胸の奥が少し熱を帯びた。
そのやさしい言い方が、余計に心を揺らす。
ソファに沈んだままの honoka は、
まるで体の重さを預ける場所を探すように姿勢をゆっくり変えた。
その瞬間、肩に貼りついた髪がわずかに揺れ、
うっすらとした湿り気が空気に混ざるような気がした。
そして、ほんの一瞬だけ俺と目が合った。
そのときの彼女の表情は、無邪気なのにどこか艶を含んでいて、
“勘違いを誘う危うさ”があった。
それは、まさに妄想が本編へ滑り落ちる合図みたいだった。
呼吸を整えながら、俺はその光景を焼きつけた。
彼女のゆるい姿勢も、柔らかく崩れた脚の形も、
水着の布が影を作るその部分までも、
ひとつひとつがじわじわと熱を持って迫ってくる。
やがて、honoka が少し体勢を変え、
「ああ…」と小さく息を漏らした。
その音が、俺の胸の奥にまで届いてしまう。
静かな部屋に、彼女の呼吸だけがゆっくり溶けていく。
理性と妄想の境界がほどけていき、
“触れたら壊れそうな瞬間”が、すぐそこまで寄ってくる。
俺はただ息を飲み、
その光景が終わらないように祈っていた。