レンタルルームに入ったときのhonokaは、
まだどこか仕事の癖が残っているような姿勢で立っていた。
柔らかく首を傾けて「失礼します」と言いそうな雰囲気。
以前受付をしていたという話にも、妙に説得力がある。
けれど、水着に着替えると様子が変わる。
肩の線をなぞる指、
腰に手を当てて鏡越しに自分を見つめる横顔。
そのたびに、胸の奥がゆっくり熱を帯びていく。
部屋に流れる空気すら、
彼女の肌から立つわずかな温度に引き寄せられているようだった。
水着の布をそっとつまむ仕草は、
“見られることを知った大人の女性”のそれで、
どきりとさせられる。
長い息とともに、
彼女は静かに私服へ着替え始めた。
シャツが肌をすべる音、
スカートがふわりと広がって落ち着く気配。
その一つ一つが、
水着姿よりもむしろ俺の想像を刺激してくる。
普段の彼女へ戻っていく過程が、
妙に官能的なんだ。
まるで“秘密をしまい込む儀式”みたいで。
「もう大丈夫です」
と、どこか安堵したように笑ったと、俺は勝手にそう妄想する。
その笑みには、
俺にだけ許された緩みがあるように思えてしまう。
普通の女の子の服装に戻ったhonokaを見ていると、
さっきまでの水着の姿が嘘みたいで、
けれど消えてくれない。
その落差が胸の奥で何度もゆっくり反響して、
気付けばさらに深いところまで踏み込みたくなる。
“見せるために着替える彼女”よりも、
“日常へ戻っていく彼女”の方が、
どうしようもなく官能的なんだ。
そしてその余韻だけが、
静かな部屋にゆっくりと残り続けていた。