sayaは21歳。
撮影スタジオで見かけたその日、
俺は「ただの宣材撮影の待ち時間」だと思っていた。
けれど、廊下の空気が少し動いただけで、
胸の奥がざわつくような気配を残していった。
もちろん、これはすべて俺の妄想だ。
——そうでなければ、妄想であっても成り立たない。
控室の扉が開いて、
sayaがスマホを手に軽く息をつく。
その仕草が妙に自然で、
まるで「少しだけ見られてもいいよ」と
暗黙に許してくれているように見えた。
俺の勝手な都合のいい想像だけれど、
そう思った瞬間、身体の内側が熱を帯びた。
白い廊下をゆっくり歩く彼女。
スカートの裾が、小さく揺れるたびに、
目がそこに吸い寄せられる。
揺れの“深さ”を測るように、
呼吸が浅くなっていくのを自覚する。
スマホの画面に影が落ち、
sayaがうっすら唇をすぼめて息を吐いた。
その仕草が、昼の清純さとは違う、
夜の彼女の一面をふと連想させる。
撮影前の緊張かもしれないし、
単なる癖かもしれない。
でも俺には、
「少し見せてもいいよ」という
大人の含みを持った合図にしか見えなかった。
すれ違う瞬間、
ふわりと甘い香水が鼻をかすめた。
その香りに、背中を指でなぞられたような感覚が走る。
振り返れば、
彼女もまたわずかにこちらを見る。
その“わずか”が、やけに意味深に見えてしまう。
——勝手に見られているわけじゃない。
——彼女が、少しだけ許してくれた。
妄想とはいえ、そう思えるだけで、
足元がぐらつくような高揚がこみ上げてくる。
廊下の奥へと歩いていくその姿。
揺れる影。
指先からこぼれる光。
触れてはいないのに、
触れたときの温度が想像できてしまうほど、
彼女の存在感は強かった。
もし、あのとき足を止め、
こちらに真正面から目を向けていたら。
もし、「見てもいいよ」と
微笑んでいたとしたら。
妄想の中の俺はきっと、
理性の輪郭がにじむほどの熱を抱えていたはずだ。
スタジオの廊下に残ったのは、
すぐに消えてしまうはずの香りと、
身体の深いところに沈む余韻だけだった。
だけどそのわずかな余韻が、
今もこうして、
続きを想像させる。