僕が知っているのは、名前だけだ。
そして、彼女が“昼は清楚な21歳の女子大生で、夜は大人の仕事をしている”という情報だけ。
それでも——いや、だからこそ。
その裏にある感情を想像してしまう。
夕方、あのビルに吸い込まれていった saya を見送ったとき、
胸の奥に、小さなざらつきが残った。
まるで何かが始まる予感だけを置いていったような。
宣材撮影のために制服へ着替えた彼女。
その姿を思い浮かべるだけで、僕の中の妄想は静かに熱を帯びていく。
きっと、彼女は鏡の前で襟を整えている。
指先でそっと触れた布が、ぱり、と小さく鳴る。
髪を耳にかけたとき、肌の白さが際立つのを自分でも感じているはずだ。
ソファへ腰を下ろす。
その瞬間、柔らかいクッションの沈みと一緒に、
彼女の呼吸がひとつ深くなる。
撮影用のポーズなんて、まだとっていない。
ただ座っているだけのはずなのに、
意識しない仕草が、彼女の“夜の顔”を呼び覚ましてしまうのだろう。
脚を組み替える——
その動作が、僕には異様に鮮明に想像できる。
太ももにそっと触れたスカートの布がわずかに浮き、
膝の角度が変わるたびに、光の形が滑っていく。
そのたび、彼女の目もほんの少し伏せられ、
自分が“見られる存在”である感覚を確かめているように思えてしまう。
もちろんすべては合意のうえで、
彼女が自分の選んだ場所で、自分の意思でしていることだ。
だからこそ、彼女の内にある高揚が想像を刺激する。
僕は遠くから、そのわずかな隙間だけを覗き込むようにして、
勝手に彼女の感情を重ねていく。
もし、スカートの奥の気配に自分で気づいたら——
saya はどんな表情をするのだろう。
恥じらいか、あるいは……期待に似た何かか。
ソファの材質のざらりとした触感が、
彼女の脚に伝わっていく。
制服の布がこすれ、ほんの少し熱がこもる。
そんな感覚を、彼女自身が楽しんでしまう瞬間があるのだとしたら——
僕はその想像だけで、息を飲んでしまう。
清楚な女子大生と、男に見られることで高揚する女性。
そのふたつが同じ身体の中で重なり、
ふとした仕草ににじみ出る。
さっきの脚線の無防備さは、
彼女の二つの顔が触れ合った瞬間だったのかもしれない。
撮影スタッフの前で、
あるいはまだ誰もいない控室で、
彼女は静かに脚を組み替える。
その動作ひとつで空気が少しだけ色づき、
想像の僕の胸がじわりと熱くなる。
その“瞬間の匂い”をもっと確かめたくて、
僕はつい、続きを求めてしまう。