手に持ったノートが、少しだけ重く感じた。書いた言葉が、風に乗って届く気がして。
突風が吹いた瞬間、髪が舞い上がり、視界が揺れる。スカートの裾が翻り、ノートを握る手に力が入る。
このノートには、誰にも見せたことのない言葉が詰まっている。夢、不安、後悔、希望。全部、ここに書いた。
でも今日、決めた。もう一人で抱え込まない。
風は、止まることを知らない。ずっと動き続けて、いろんなものを運んでいく。桜の花びらも、秋の落ち葉も、誰かの吐息も。
だったら、私の言葉も。
風に逆らわず、身を任せる。髪が乱れても、もう気にしない。むしろ心地いい。縛られていた何かが、解けていく感覚。
ノートを開く。最後のページに、一行だけ書き足す。
「この言葉を、必要な人へ」
カバンから封筒を取り出す。ノートの一ページを破って、そっと入れる。宛先は、もう書いてある。あとは、ポストに入れるだけ。
また風が吹く。今度はもっと強く。でも私は、もう怖くない。
風が運ぶもの。それは時に優しく、時に激しく、でもいつも必要なタイミングで、誰かの元へ届く。
私の言葉も、きっと。