「迷ったら、登れ」
本に書いてあった、その一文。
長い階段の前で、私は立ち尽くしていた。
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この階段の先に、何があるのか。
会いたい人がいる。でも、会ってどうなる。
伝えたい言葉がある。でも、伝えて何が変わる。
迷っていた。ずっと。
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手に持った本。
今朝、なんとなく手に取った。カバンに入れた。
そして今、この瞬間。
ページを開いたら、そこにあった。
「迷ったら、登れ」
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階段を見上げる。
長い。先が見えない。
登り切れるだろうか。途中で後悔しないだろうか。
でも、登らなければ、一生わからない。
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深呼吸をひとつ。
本をカバンにしまう。
そして、一歩。
足が、階段に触れる。
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もう一歩。さらに一歩。
最初はゆっくり。でも、だんだん速くなっていく。
一段飛ばし。二段飛ばし。
気づけば、走っていた。
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なぜ走っているのか、自分でもわからない。
ただ、止まったら、きっと引き返してしまう気がした。
考える前に、身体が動いた。
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息が切れる。足が重い。
でも止まらない。
本の言葉が、頭の中で響く。
「迷ったら、登れ」
そうだ。迷う時間があるなら、登ればいい。
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階段の途中。振り返る。
ここまで来た。もう、引き返せない。
いや、引き返したくない。
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前を向く。まだ続く階段。
でももう怖くない。
なぜなら、もう登り始めたから。
一度動き出したら、止まる理由はない。
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また駆け上がる。
風が、背中を押してくれる気がした。
髪が乱れる。汗が流れる。
でも、心は軽い。
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頂上が、見えてきた。
あと少し。もう少し。
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最後の一段。
踏み出す。
着いた。
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息を整える。心臓が激しく鳴る。
でも、やり遂げた。
階段を、登り切った。
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そこには、誰かが立っていた。
待っていてくれた。
「来てくれたんだ」
その言葉に、涙が出そうになった。
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「迷ったんだけど」
正直に言う。
「でも、登ってきた」
相手が、笑った。
「ありがとう。来てくれて」
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本を取り出す。
「これ、読んでた?」
相手に見せる。
「あ、それ俺も読んだ」
驚く。
「『迷ったら、登れ』だろ?」
同じだった。
同じページを、読んでいた。
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二人で、笑った。
偶然なんて、ない。
必然だ。すべて。
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階段を登る決意。
それは、本が背中を押してくれた。
でも本当は、自分の中にあった答え。
本は、ただそれを形にしてくれただけ。
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「降りようか」
相手が言う。
「今度は、一緒に」
頷く。
二人で、階段を降りる。
***
登ってきた道。
一人で登るのは、辛かった。
でも降りる時は、隣に誰かがいる。
それだけで、世界が変わる。
***
階段を駆け上がって、良かった。
迷ったけど、登って良かった。
本が教えてくれた。
「迷ったら、登れ」
今度は、私がこの言葉を、誰かに伝えよう。
迷っている人に。
「大丈夫。登れば、きっと何かが変わる」