「迷う時間があるなら、一段でも登れ」
本に書いてあった、その言葉。
長い階段の前で、私は立ち尽くしていた。
***
この階段を登った先に、何がある?
会いたい人がいる。でも、会ってどうする?
伝えたい言葉がある。でも、伝えて何が変わる?
迷っていた。ずっと。
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カバンから本を取り出す。
今朝、なんとなく持ってきた。読みかけで、まだ半分も進んでいない。
ページを開く。ランダムに。
そこに、あった。
「迷う時間があるなら、一段でも登れ。登れば、景色が変わる」
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顔を上げる。階段を見る。
長い。先が見えない。
でも、登らなければ、永遠にわからない。
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本をカバンにしまう。
深呼吸。
そして、一歩。
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足が、階段に触れる。
重い。でも、進む。
もう一歩。さらに一歩。
最初はゆっくり。
でも、だんだん速くなっていく。
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気づけば、走っていた。
一段飛ばし。二段飛ばし。
なぜ走っているのか。
わからない。
ただ、止まったら、引き返してしまう気がした。
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息が切れる。
足が痛い。
でも止まらない。
本の言葉が、頭の中で響く。
「迷う時間があるなら、登れ」
そうだ。考える前に、登ればいい。
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階段の途中。振り返る。
ここまで来た。
思ったより、高い。
でも、まだ続く。
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前を向く。
また駆け上がる。
風が、背中を押してくれる。
髪が乱れる。汗が流れる。
でも、心は軽い。
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頂上が、見えてきた。
あと少し。もう少し。
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最後の数段。
力を振り絞る。
一段、また一段。
そして、着いた。
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息を整える。
心臓が、激しく鳴る。
でも、やり遂げた。
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そこには、誰かが立っていた。
待っていてくれた。
「来てくれたんだ」
その声に、涙が出そうになった。
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「迷ったけど」
正直に言う。
「でも、登ってきた」
相手が、微笑んだ。
「ありがとう」
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本を取り出す。
「これ、読んでたら、背中押されて」
見せる。
「あ、それ俺も読んだ」
驚く。
「『迷う時間があるなら、登れ』だろ?」
同じだった。
同じ本。同じ言葉。
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偶然なんて、ない。
すべて、必然。
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「降りようか」
相手が言う。
「今度は、一緒に」
頷く。
***
二人で、階段を降りる。
登ってきた道。
一人では辛かった。
でも今は、隣に誰かがいる。
それだけで、世界が変わる。
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階段を駆け上がって、良かった。
迷ったけど、登って良かった。
本が教えてくれた。
「迷う時間があるなら、一段でも登れ」
***
今度は、私がこの言葉を伝えよう。
迷っている誰かに。
「大丈夫。登れば、きっと何かが変わる」
階段は、嘘をつかない。
登れば、必ず景色が変わる。
そして、その景色の中に、
きっと、あなたが探していた答えがある。