風が押してくれる。「行っておいで」と。
待ち合わせ場所への階段。上を見る。
長い階段。
スマホを見る。メッセージが来ている。
「階段登ったらすぐだよ。待ってる」
笑みがこぼれる。
待っていてくれる。それだけで、力が湧く。
一歩、踏み出す。
階段に足をかける。ニーハイソックスの足元。
でも、軽い。なぜなら、会いたい人が待っているから。
また一歩。スマホをバッグにしまう。
もう見なくていい。登るだけ。
風が吹く。髪が揺れる。
「頑張って」と言ってくれている気がした。
階段を登る。一段ずつ。でも、速い。
待たせたくない。早く会いたい。
階段の途中。立ち止まる。
息を整える。スマホを取り出す。
「もうすぐ着くよ」とメッセージを送る。
すぐに返事が来る。「待ってる」
また力が湧く。
また登る。今度はもっと速く。
一段飛ばし。でも、危なくない。
風が、支えてくれている気がするから。
振り返る。ここまで来た。
あっという間だった。
待っている人がいると、こんなに速く登れるんだ。
また登る。風が背中を押してくれる。
「もう少しだよ」と。
頂上が見えてきた。
「もうすぐ」
心臓が跳ねる。嬉しさと、少しの緊張。
最後の数段。ゆっくり登る。
急に現れたら、びっくりさせちゃうから。
そして、着いた。頂上。
息を整える。髪を直す。
スマホを取り出す。「着いたよ」と送ろうとして、やめる。
直接言おう。会って。
前を見る。
そこに、待っている人の姿が見える。
こちらに気づいて、手を振る。
笑顔。
風が吹く。最後に。
「よく来たね」と。
頷く。来て良かった。
この階段を登って、良かった。
待っている人がいるって、素晴らしい。
そう思いながら、歩き出す。
その人のもとへ。