生きて帰る階段―当たり前じゃない奇跡

風が言った。「よく生きたね。明日も、生きていいよ」と。

帰り道の階段。コートに包まれて。

登る。生きて、家に帰る。

当たり前じゃない。

昔は、そう思えなかった。

生きることが、辛かった。

家に帰ることすら、重かった。

でも今は、違う。

一歩、踏み出す。

階段に足をかける。

また一歩。今日も、生きた。

朝、起きた。準備した。外に出た。

いろんなことがあった。

でも、生きた。

そして今、家に帰っている。

階段を登る。一段ずつ。

登りながら、思う。

生きて帰れることは、奇跡。

当たり前じゃない。

階段の途中。立ち止まる。

深呼吸をする。

「今日も、生きた」

声に出して言ってみる。

涙が、こぼれそうになる。

また登る。風が吹く。

「よく生きたね」と。

「明日も、生きていいよ」と。

ありがとう。その言葉が、嬉しい。

生きる許可を、もらえた気がする。

頂上が見えてきた。

家のドア。

「もうすぐ」

最後の数段。

コートが、温かい。

このコートに包まれて、家に帰れる。

幸せ。

そして、着いた。家。

鍵を開ける。

ドアを開ける。

ただいま。

生きて、帰ってきた。

今日も。

風が、最後に吹く。

「おかえり」と。

「明日も、待ってるよ」と。

頷く。ありがとう。

生きることは、当たり前じゃない。

毎日が、奇跡。

家に帰れることも、奇跡。

この階段を登れることも、奇跡。

生きていること、全てが奇跡。

だから、明日も生きよう。

風が許してくれたから。

「生きていいよ」と。

おやすみ、今日。

そして、また明日。