風が言った。「それでいいんだよ」と。
冬の階段。グレーのコートを纏って。
手を、ポケットに入れたまま。
ゆっくり登る。急がない。
一歩、踏み出す。
階段に足をかける。ゆっくりと。
また一歩。焦る必要はない。
自分のペースで、いい。
階段を登る。一段ずつ。
登りながら、思う。
昔は、階段を走って登っていた。
「早く、早く」と。
誰かに追いつこうと。
誰かに追い越されないように。
でも今は、違う。
ゆっくり、登る。
階段の途中。立ち止まる。
でも、息切れはしていない。
ゆっくり登っているから。
周りを見る。景色が見える。
急いでいた時は、見えなかった景色。
また登る。風が吹く。
「それでいいんだよ」と。
ありがとう。その言葉が、嬉しい。
ポケットに手を入れたまま、登る。
この仕草が、落ち着く。
焦っていない証拠。
余裕がある証拠。
頂上が見えてきた。
「もうすぐ」
でも、急がない。
このペースで、登り続ける。
最後の数段。
コートが、風で揺れる。
ゆっくりと。
私も、そんな風に生きたい。
そして、着いた。頂上。
ゆっくりだったけど、着いた。
誰よりも遅かったかもしれない。
でも、それでいい。
自分のペースで、登り切った。
それが、大切。
風が吹く。最後に。
「よくやった」と。
「自分のペースを守ったね」と。
頷く。ありがとう。
これからも、このペースで生きよう。
焦らず。
急がず。
でも、止まらず。
ゆっくりと、確実に。
この階段が、教えてくれた。
速さじゃない。
自分のペースを守ることが、大切だと。
そして、焦らずに登れば、
必ず、着くと。