スマホを手に取り、舞台の公式SNSを開く。
推しの笑顔が画面いっぱいに広がる。
稽古中の短い動画、その合間に見せる素の表情。
見つめるうちに、胸の奥がじんわりと温かく、そして妙に落ち着かない気持ちになる。
ふと、彼女はスマホをベッドの脇に置いた。
背中をシーツに預け、長く息を吐く。
そして、自分でも驚くほど自然に、手がワンピースの上を滑っていった。
「何してるんだろ…」
そう思うのに、動きは止まらない。
太ももに触れる布越しの感触が、やけに鮮明に伝わってくる。
裾をそっと握りしめると、心臓の鼓動が速くなる。
頭の中に浮かぶのは、さっき画面で見た彼の笑顔。
舞台の上で役を生きる姿、低く響く声。
そのすべてが、今のrikoを熱くしていた。
指先が、ゆっくりと円を描く。
まだ服の上からなのに、そこから伝わる熱は確かだった。
ベッドの上で、片膝を少し立てる。
清楚なワンピースがわずかに波打ち、太ももの肌がちらりと覗く。
誰にも見せない表情が、少しずつ顔に浮かび上がる。
まぶたが重くなり、唇がかすかに開く。
静かな部屋に、自分の浅い呼吸だけが響く。
——もし今、この部屋に誰かがいたら。
そんな考えが頭をよぎる。
もちろん、あり得ない。
でも、あり得ないはずの想像が、逆に熱を煽る。
手の動きが、少しずつ速くなる。
裾を握る力が強まり、吐息がかすかに漏れる。
「……っ」
声にならない声が、喉の奥で震えた。
ほんの少し、腰が浮く。
布越しの刺激が、彼女の意識をどんどん深く沈めていく。
頭の中では、推しがすぐそばに立っている。
優しい目で見下ろし、そっと頬に触れるような錯覚。
その想像に身を委ねながら、rikoは自分の奥の奥を探る。
外では、車のクラクションが一瞬響き、また静けさが戻る。
その静けさが、余計に彼女の鼓動を大きく感じさせた。
脚がわずかに震え、腰が小さく揺れる。
指先の圧が強まるたび、胸の奥に熱がせり上がってくる。
「……あ…」
ごく短い声が漏れた。
それは誰にも届かない、秘密の音。