風が聞いた。「登るの?」当然。もう、登ると決めた。
階段を見上げる。まっすぐ。
一歩、踏み出す。
ヒールが、階段を踏む。
カツ。
いい音。
また一歩。カツ。
止まらない。
階段を登る。一段ずつ。
登りながら、思う。
もう、迷わない。
もう、振り返らない。
ただ、前へ。
階段の途中。立ち止まらない。
今日は、立ち止まらない。
まっすぐ、登り続ける。
風が吹く。
「速いね」と。
速くない。ただ、止まらないだけ。
止まらなければ、着く。
それだけのこと。
ヒールの音が、響く。
カツ、カツ、カツ。
リズミカルに。
力強く。
このリズムが、好き。
止まっていない証拠。
前に進んでいる証拠。
頂上が見えてきた。
「もうすぐ」
でも、ペースは変えない。
同じリズムで。同じ強さで。
最後まで、同じ調子で。
最後の数段。
コートが、風で揺れる。
でも、足は止まらない。
カツ、カツ。
そして、着いた。頂上。
一度も、止まらなかった。
振り返る。
登ってきた階段。
まっすぐだった。
自分の足跡も、まっすぐだった。
風が吹く。最後に。
「かっこいいね」と。
笑う。ありがとう。
かっこよくなったかな。
わからない。
でも、止まらなかった。
それだけは、確か。
この階段が、教えてくれた。
止まらなければ、着くと。
まっすぐ歩けば、着くと。
そして、ヒールの音は、
前に進む私の応援歌だと。
カツ、カツ。
明日も、この音を鳴らそう。
止まらずに。まっすぐに。前へ。