廊下を抜け、階段を上る。
古びた鉄製の扉を押し開けると、屋上の空気が一気に流れ込んできた。
強い風が髪を揺らし、スカートの裾をそっと押し上げる。
視界の先には、無機質なコンクリートと、どこまでも広がる青空。
街のざわめきは遠く、ここだけが別の世界のようだった。
屋上の隅にある階段に、ruriは腰を下ろす。
プリーツスカートがふわりと広がり、太ももの上に柔らかい日差しが落ちる。
階段の冷たい感触が、素肌を通してじんわりと伝わる。
少し強めの風が吹いた。
スカートの裾が持ち上がり、膝の上からさらに奥までをさらけ出しそうになる。
反射的に手で押さえたものの、その仕草はどこかゆっくりで、ためらいがあった。
——見られてもいいかも。
そんな思いが、一瞬だけ心をかすめる。
視線を街へと向ける。
遠くのビルの屋上や、隣の建物の窓。
そこから誰かがこちらを見ているかもしれない。
その「かもしれない」という不確かさが、ruriの呼吸を少しずつ速めていく。
風はやむ気配を見せず、時おりスカートのひだをめくり上げる。
それを押さえるたびに、自分の指先が太ももの内側に触れる。
その感触が、妙に意識される。
胸の奥で、くすぶっていた熱がじわじわと広がっていく。
ruriはゆっくりと足を組み替えた。
その動作ひとつで、スカートの奥の影が角度を変えて揺れる。
誰もいない屋上なのに、まるで視線を浴びているような錯覚。
その想像は甘く、背徳的だった。
——この瞬間を、誰かが見ていたら。
そう思うたび、心臓の鼓動が高まる。
見られることへの怖さと、期待がないまぜになった感覚。
それは制服を着ていなければ、きっと味わえなかったものだ。
数分後、ruriは立ち上がった。
風がさらに強くなり、スカートの裾が大きく舞う。
今度はもう、押さえなかった。
そのまま壁際まで歩き、街を見下ろす。
ビルの谷間に流れる車、人の波、信号の色。
すべてが遠く、小さく見える。
そして、遠くでこちらを見上げている誰かを——
ruriは、想像の中で、はっきりと描いた。
その視線は確かに自分に向けられ、スカートの奥までを捉えている。
そう信じることで、胸の奥に心地よい熱が灯る。
レンタルルームへ戻る頃には、頬がうっすらと紅潮していた。
ただ屋上で風に吹かれていただけ——そう言い聞かせながらも、
制服の中の自分は、確かにいつもと違っていた。
ruriは鍵をかけ、ベッドの縁に腰を下ろす。
スカートの裾をそっとなでる指先に、まだ屋上の風の感触が残っている気がした。
それを確かめるように、目を閉じて、深く息を吸う。
——やっぱり、制服を着ているときの私は、少し大胆になる。
そう思いながら、ruriは微笑んだ。