送信ボタンの向こう側―変わる勇気

あとは、送信ボタンを押すだけ。でもその「だけ」が、こんなにも重いなんて。

画面には、何度も書き直したメッセージが表示されている。

「お久しぶりです。元気ですか?実は、相談したいことがあって」

たった2行。でもこの2行を送ることで、止まっていた時計がまた動き出す気がした。半年前に諦めた夢。あの時は「まだ早い」と自分に言い聞かせた。でも本当は、失敗が怖かっただけだった。

風が髪を揺らす。深呼吸をひとつ。

彼女は思い出す。この場所で初めて「やってみたい」と口にした日のことを。あの時の自分は、今よりもずっと何も知らなかった。でも、目は輝いていた。

「迷ってるなら、やってみたほうがいいよ」

あの人はそう言ってくれた。今、もう一度その言葉が必要だった。

親指が、画面に触れる。「送信」のボタンが、青く光っている。

1秒、2秒、3秒。彼女は目を閉じて、ボタンを押した。

「送信済み」の文字。心臓が大きく跳ねる。もう後戻りはできない。でも不思議と、肩が軽くなった気がした。

答えがどうであれ、今日という日から、何かが変わり始める。それだけで十分だった。