
笑顔で、一歩踏み出した。もう、何も怖くない。
夕暮れの階段。黄金の光が降り注ぐ。
上を見る。長い。
でも今なら、登れる気がする。
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1週間前の私なら、この階段を見て引き返していた。
「無理だ」と。
「登れない」と。
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でも、今は違う。
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何が変わったのか。
それは、昨日の出来事。
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昨日、風が吹いた。
街角で立ち止まった時、突然の強風。
髪が、両側に大きく広がった。
夕日に照らされて、金色に輝いた。
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その瞬間、気づいた。
「私は、飛べる」
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それは比喩じゃない。
本当に、飛べる気がした。
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そして今日。
この階段の前に立っている。
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昨日まで登れなかった階段。
でも今日は、登れる。
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なぜなら、翼があるから。
風が、くれた翼が。
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一歩、踏み出す。
また一歩。
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軽い。
足が、軽い。
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階段を登るというより、
飛んでいる感じ。
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一段飛ばし。二段飛ばし。
でも、疲れない。
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風が、背中を押してくれる。
「大丈夫」と。
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階段の途中。
振り返る。
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ここまで来た。
思ったより、高い。
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でも、怖くない。
なぜなら、翼があるから。
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上を見る。
まだ続く階段。
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でも、大丈夫。
登り切れる。
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また駆け上がる。
風が、一緒に登ってくれる。
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髪が、揺れる。
翼のように。
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笑みがこぼれる。
楽しい。
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階段を登ることが、こんなに楽しいなんて。
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頂上が、見えてきた。
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黄金の光が、そこから降り注いでいる。
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「もう少し」
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最後の力を振り絞る。
いや、力なんて要らない。
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なぜなら、飛んでいるから。
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一段、また一段。
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そして、着いた。
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頂上。
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息を整える必要もない。
疲れていないから。
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景色を見る。
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街が、見える。
夕日に染まった、オレンジ色の街。
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綺麗だ。
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でも、それ以上に。
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「登り切った」という事実が、嬉しい。
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1週間前の私には、できなかったこと。
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でも今日、できた。
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何が違ったのか。
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翼。
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風が、くれた翼。
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いや、違う。
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翼は、最初からあった。
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ただ、気づかなかっただけ。
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風が、教えてくれた。
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「君には、翼がある」と。
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そして今、私は知っている。
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どんな階段でも、登れる。
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なぜなら、翼があるから。
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風が、また吹く。
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髪が、広がる。
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黄金の翼。
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「ありがとう」
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声に出さず、心の中で呟く。
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風へ。
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階段へ。
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そして、自分へ。
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「よく、登ってきたね」
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次は、どこへ行こう。
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翼があれば、どこへでも行ける。
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そう思うと、
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世界が、広がった気がした。