
冬の階段は、厳しいけれど、登る価値がある。
冬の街。階段の前に立つ。
上を見る。
長い階段。
冷たい風が、吹き降りてくる。
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「登るの?」
心の中で、自分に問いかける。
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「寒いよ」
「疲れるよ」
「やめたら?」
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でも、足は動く。
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一歩、踏み出す。
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階段に足をかけた瞬間、
冷たい。
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冬の階段は、春の階段より冷たい。
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でも、登る。
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なぜなら、上に何があるか知りたいから。
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また一歩。
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ニットに手を入れる。
温かい。
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でも、顔は冷たい風に晒される。
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冬は、厳しい。
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でも、だからこそ。
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登り切った時の達成感は、
他の季節より大きい。
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階段を登る。
一段ずつ。
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急がない。
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冬は、急ぐ季節じゃない。
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ゆっくり、確実に。
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階段の途中。
立ち止まる。
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息が、白くなる。
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寒い。
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でも、生きている実感。
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振り返る。
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ここまで来た。
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思ったより、高い。
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でも、まだ続く。
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上を見る。
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頂上は、まだ見えない。
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でも、大丈夫。
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一段ずつ登れば、必ず着く。
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また登る。
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風が、吹く。
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冷たい。
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でも、止まらない。
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なぜなら、止まったら、もっと寒いから。
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動いていれば、身体が温まる。
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一段、また一段。
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ニットが、温かさを保ってくれる。
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ありがとう、ニット。
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君がいなければ、登れなかった。
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頂上が、見えてきた。
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「もう少し」
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最後の力を振り絞る。
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いや、振り絞らなくても。
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ここまで来たら、
身体が勝手に動く。
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一段、また一段。
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そして、着いた。
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頂上。
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息を整える。
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白い息が、何度も出る。
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寒い。
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でも、達成感。
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景色を見る。
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街が、見える。
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冬の街。
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冷たい空気が澄んでいて、
景色がくっきり見える。
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綺麗だ。
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春や夏には、見えなかった景色。
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冬だからこそ、見える景色。
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階段を登ったからこそ、見える景色。
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「来て、良かった」
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心から、そう思う。
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風が、吹く。
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冷たい。
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でも、優しい。
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「よく来たね」
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そう言ってくれている気がした。
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冬の風は、厳しい。
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でも、乗り越えた人には、優しい。
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ニットに手を入れる。
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温かい。
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でも、この温かさは、
ニットだけじゃない。
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自分自身の温かさ。
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登り切った達成感が、
身体を内側から温めている。
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冬の階段。
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厳しい。
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でも、登る価値がある。
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なぜなら、
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厳しさの先に、
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美しい景色が待っているから。
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そして、
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自分自身の強さを、
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確認できるから。
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「私は、やれる」
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冬の階段が、
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それを教えてくれた。