馴染みの階段―ここが私の街

風が言った。「ここが、君の街だよ」と。

この街の階段。登る。

何度も登った階段。

いつの間にか、馴染みの道になっていた。

一歩、踏み出す。

階段に足をかける。

この感触、覚えている。

何度も、踏んできたから。

また一歩。馴染みの一段。

階段を登る。一段ずつ。

登りながら、思う。

最初は、知らない街だった。

知らない道。知らない階段。

でも今は、違う。

この階段が、私の階段。

階段の途中。立ち止まる。

周りを見る。

いつもの景色。

でも、好きな景色。

馴染みの景色。

また登る。風が吹く。

「ここが、君の街だよ」と。

そうだね。ここが、私の街。

いつの間にか、そうなっていた。

頂上が見えてきた。

「もうすぐ」

何度も見た頂上。

でも、毎回嬉しい。

最後の数段。

コートが、風で揺れる。

この街の風。

もう、馴染みの風。

そして、着いた。頂上。

いつもの景色。

でも、今日も綺麗。

風が吹く。最後に。

「おかえり」と。

頷く。ただいま。

居場所がある、ということ。

それは、とても幸せなこと。

知らない場所だった。

でも、通い続けた。

そして、馴染みの場所になった。

この階段が、教えてくれた。

居場所は、見つけるものじゃない。

作るもの。

通い続けて。

愛し続けて。

いつの間にか、そこが居場所になる。

この街が、私の街になった。

この階段が、私の階段になった。

それが、嬉しい。

ありがとう、この街。

ありがとう、この階段。

私の居場所になってくれて。