
「一人は、怖い?」 風がそう聞いた。
ブルーアワーの階段を登り始める。 青い空気。 冷たい手すり。 背中に、街の灯りが滲んでいる。
一段目。 昔の私は、怖かった。 一人でいることが。 誰かと一緒じゃないと、不安で仕方なかった。
二段目。 でも、気づいた。 誰かと一緒でも、寂しい時は寂しい。 結局、自分が自分の味方じゃなければ、何人いても同じだった。
三段目で立ち止まる。 振り返ると、街の灯りが揺れている。 温かくて、少し切ない。
「寂しくないの?」 風がまた聞く。
ポケットに手を入れたまま、笑う。 「寂しくないよ」 本当にそう思う。
四段目。五段目。 一人で登る階段は、静かだ。 でも、その静けさが心地いい。
頂上に着く。 青い街を見下ろす。 温かいボケ味の灯りが、宝石みたいに光っている。
風が吹く。 髪が揺れる。
「一人でも、大丈夫だね」 風が言う。
「うん。一人でも、大丈夫」
大丈夫になったんじゃない。 大丈夫だって、気づいたんだ。 ずっと前から、私は私の味方だった。