
「一人は、怖い?」 風がそう聞いた。
ブルーアワーの住宅街。 古い階段を見つけた。 一段、登る。
昔は怖かった。 一人でいること。 誰かと一緒じゃないと不安で。 隣に誰かがいないと、自分の価値が分からなくて。
二段、三段。 足音が響く。 自分の足音だけ。
でも、それが心地いい。
風が吹いた。 コートの裾が揺れる。 「いつから平気になった?」と風が聞く。
いつだろう。 気づいたら、一人の時間が好きになっていた。
五段、六段。 背景に、家々の灯りが見える。 オレンジ色の、暖かい光。
あの灯りの中には、きっと誰かがいる。 笑っている人も、泣いている人も。 一人でいる人も。
七段、八段。 登るたびに、空が近くなる。 青い空。深い青。
一人でも、寂しくない。 一人だから、見える景色がある。
階段の上に立った。 振り返る。 歩いてきた道が、ブルーに染まっている。
風が言った。 「成長したね」と。
うん。 もう、一人を怖がらない。 この青い世界を、ちゃんと一人で歩ける。