
「今日は、どんな自分でいく?」 風がそう聞いた朝。 迷わなかった。 赤いリップを引いた。
階段の前に立つ。 冬の夕暮れ。 街がブルーに染まる時間。
一段目を登る。 昔は、強い自分を演じていた。 弱さを見せたら、負けだと思っていた。
二段目。 風が吹く。 髪が乱れる。 でも、直さない。
三段目。 「完璧じゃなくていい」 そう思えたのは、いつからだろう。
途中で立ち止まる。 振り返ると、歩いてきた街が見える。 青くて、静かで、美しい。
この街で泣いた日もある。 逃げたくなった日もある。 それでも、ここにいる。
「登るの?」風が聞く。 「登るよ」答える。
再び一段。 膝が重い日もある。 息が切れる日もある。 それでも、止まらない。
頂上に着く。 景色は、まだ青い。 でも、遠くに小さな光が見える。
「強さって何?」風がもう一度聞く。
弱い自分を知っていること。 それでも、階段を登ること。 赤いリップは、そのしるし。
「いい答えだ」 風が笑った。
また明日も、登ろう。 この赤い唇で。