
「前へ、行きな」
風が言った。
桜並木の階段を、登り始めた。
ミントグリーンのスカートが、風にひらめく。
24度。
コートはもう、いらない季節になっていた。
一段、また一段。
足元に、花びらが落ちている。
踏みしめながら、歩く。
ふと気づいた。
「もうすぐ葉桜になる」
少し、切なかった。
桜が好きだった。
満開の、あの眩しさが好きだった。
立ち止まって、振り返る。
来た道を見下ろした。
散り始めた桜が、白く霞んでいる。
綺麗だ。
散りながらも、美しい。
また、登り始めた。
風が言う。「終わりじゃないよ」と。
そうか、と思った。
桜が散っても、春は続く。
新しい葉が出て、木は強くなる。
私も、そうだ。
何かが終わっても、前へ進める。
この階段の先に、何が待っていても。
頂上に着いた。
空が、青かった。
風が、髪を撫でた。
「ほら、見えるだろう」
つづき