- 8月 28, 2025
[yuna 妄想#005] 誰もいない屋上で、谷間をそっとひらく
夕暮れ前の屋上は、まるでこの世から切り取られた秘密の空間のようだった。 都内の大学に通う22歳のyunaは、今日も仲間とのダンス練習の前にひとり、少し早くその場所に来ていた。 コンクリートの熱気はまだ残っていたけれど、風はやさしくて、ビルの隙間から流 […]
夕暮れ前の屋上は、まるでこの世から切り取られた秘密の空間のようだった。 都内の大学に通う22歳のyunaは、今日も仲間とのダンス練習の前にひとり、少し早くその場所に来ていた。 コンクリートの熱気はまだ残っていたけれど、風はやさしくて、ビルの隙間から流 […]
ビルの屋上に吹く風は、街の喧騒を忘れさせるほど静かだった。 yunaはその場所にひとり、立っていた。 22歳。都内の大学に通いながら、仲間と借りたレンタルルームでダンスの練習に明け暮れる日々。 だけど今日は、約束の時間より少し早く着きすぎてしまったら […]
階段の先にある鉄扉を押し開けると、昼下がりの陽射しがまぶしかった。 ビルの屋上。周囲を囲う金属フェンスの隙間から、街の喧騒が遠くに聞こえる。けれど、ここには誰もいない。時間が止まったような静けさのなかで、彼女はひとり、階段に腰を下ろしていた。 yun […]
昼過ぎのビルは、休日のオフィス街のように静まり返っていた。 エレベーター前に貼られた「関係者以外立ち入り禁止」の紙も、風に揺れることはない。 そのビルの中にあるダンススタジオ。今日はどうやら、まだ誰も来ていないらしい。 いや、ひとりだけ。 階段をのぼ […]
このビルの上階、いつもより早く来てしまった彼女が、静かに時間を潰している——そんな想像が頭に浮かぶ。 それが、yunaだった。 彼女の名前を知っているわけじゃない。だけど、心の中ではそう呼んでいた。 マスクをしたその横顔に、どこか見覚えがあるような錯 […]
mariは、名古屋の中小企業で働く26歳。 会社では「真面目で丁寧な子」と言われていて、髪も爪もきちんとしている。 けれど、SNSでは時折、自撮りや後ろ姿の写真をあげている。 そして、フォロワーの中のごく一部にだけ公開している“別アカウント”があるこ […]
たった一度、街ですれ違っただけなのに。 マスクをしていた彼女の顔の全ては見えなかった。 けれど、そのとき目が合った気がして、なぜか忘れられない。 そのあと何日も、彼女の姿が脳裏に焼きついていた。 黒いミニ丈のワンピース、白い襟元、キャラクター柄の靴下 […]
「名古屋から来たんです」 そう言って、彼女は静かに笑った。 東京の空気に少し緊張しているようなその笑みが、なぜか印象に残っていた。 名刺交換をしたわけでもなければ、連絡先を知っているわけでもない。 けれど、その一瞬の記憶だけで、俺の中には彼女のイメー […]
「……会いたかったな」 薄暗いホテルの部屋。ベッドの上で仰向けになったmikiは、スマホの画面をじっと見つめていた。 東京にいる元彼から届いた「久しぶりに会いたい」というメッセージ。あれがきっかけだった。仕事を調整し、ちょっとだけおしゃれをして、ひと […]
mikiは地方の中小企業で働く26歳の事務職。 口数は少なく、職場では「真面目で丁寧な人」と評されている。 けれど僕は、一度だけ街角ですれ違ったそのとき、彼女の横顔に妙に惹きつけられた。 黒髪の揺れ方や、伏せられたまつ毛の影が、忘れられない。 ただす […]